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ID番号 01703
事件名 解雇無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 神戸製鋼所事件
争点
事案概要  小学卒を中学卒と詐称して雇入れられた者が右事実を理由としてなされた懲戒解雇が無効であるとして解雇無効確認を求めた事例の控訴審。(控訴棄却)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 経歴詐称
裁判年月日 1962年5月14日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (ネ) 1375 
裁判結果 棄却
出典 高裁民集15巻6号391頁/労働民例集13巻3号618頁/時報309号30頁/法曹新聞179号9頁
審級関係
評釈論文 窪田隼人・法律時報35巻4号110頁/慶谷淑夫・ジュリスト292号96頁/柳川真佐夫・判例タイムズ178号80頁
判決理由  経歴の詐称行為が懲戒処分の事由たるには、右詐称行為が雇入契約締結の際、信義則に違反してなされたというだけでは足らず、労務者の容態によってその後引続き使用者の欺罔状態が継続し、具体的に企業秩序違反の結果を生ぜしめたことが必要であると解するのが相当である。
 次に就業規則にいう、詐称の内容たる「重要な前歴」とは何を指称するものであるかを検討するに、具体の場合にその前歴詐称が事前に発覚したとすれば、使用者は雇入契約を締結しなかったか、少なくとも同一条件では契約を締結しなかったであろうと認められ、かつ、客観的にみても、そのように認めるのを相当とする、前歴における、ある秘匿もしくは虚偽の表示、かようなものを指称する概念であると認めるのが、右規定の趣旨、文言に適合するものと解せられる。
 そこで、まず一般的に最終学歴は重要な前歴にあたるかどうかを考えるに、最終学歴は人の一生における修学時代の頂点を占めるものであって、ある人の有する知力、能力を必ずしも正確に表現するものとはいえないにしても一応その判定の目安になると一般的に受け取られており、未知の人の能力評価にあたっては無視できない要素とされ、したがって、一般の公私の採用契約にあたって、その表示を要求されない場合は極めて異例に属する。又使用者は従業員を採用するにあたって知得した最終学歴のいかんを、これを他の主なる職歴とともに採用後における労働力の評価、労働条件の決定、労務の配置管理の適正化等の判断資料に供するのが一般であるから、最終学歴は一般的に重要な前歴にあたるものと解するのが相当である。