全 情 報

ID番号 01809
事件名 地位保全仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 紀伊国屋書店事件
争点
事案概要  東京の洋書部仕入第二課から横浜営業所への転勤命令を拒否したことを理由として、懲戒解雇された組合員が、従前の職場に勤務する従業員である地位を有することを仮に定める、及び賃金の仮払の仮処分を申請した事例。(一審 申請却下、当審 控訴棄却)
参照法条 労働基準法2章,89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続
裁判年月日 1976年3月25日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ネ) 1128 
裁判結果 棄却
出典 労働判例254号56頁
審級関係
評釈論文
判決理由  右就業規則第六六(2)、(1)項の定め(いわゆる協議約款)は、出社停止以上の懲戒処分が従業員の雇用関係、待遇に重大な影響を及ぼす事項であることに鑑み、会社がその決定をなすにあたっては、その恣意・独断を許さず、事前に経営協議会において組合と協議し、かつ、当該従業員に対して弁明の機会を与え、その結果を参酌してこれを決すべきことを義務付けたもので、懲戒の前提として必要不可欠な手続を定めたものと認めるべきであるから、この手続を欠いた懲戒処分は特段の事情がない限り違法無効と解すべきである。そして、昭和四四年八月一日の本件懲戒解雇が右手続を履践しないものであることは被控訴人の主張自体に照らして明らかであり、また被控訴人において右特段の事情についての主張・立証はないから、右懲戒解雇の意思表示は無効である。
 さきに引用した原判示のとおり、実質審議に入った昭和四四年八月一八日、同年一一月一一日、同月一三日、同月二一日の経営協議会を通じ、会社は、控訴人に対する横浜営業所転勤の必要性、福岡営業所から横浜営業所に転勤場所が変った事情、更に控訴人が拒否の理由として述べるところは会社側としては正当な理由と思料されないことを説明し、組合側の反論も聴いているのであるから、懲戒解雇の理由たる事実について審理があったということができ、また懲戒の程度についての審議にしても、会社は、最初の懲戒解雇を撤回はしないものの、控訴人が本件転勤命令(これが違法無効でないことは前説示によって明らかである。)に応ずれば、一歩退いて右の懲戒解雇処分は撤回し、出社停止程度の処分にとどめるとの態度を表明しているのであるから、少くとも本件転勤命令自体は有効であるとの前提にたって、控訴人が遅ればせながら転勤に応じれば懲戒解雇を撤回し、一旦拒否したことに対する制裁としては出社停止程度の処分はやむを得ないとの意思表明をしたものと解され、これに対し組合側は、ことA問題に関しては右懲戒解雇の処分の違法無効の事由を挙げてその撤回の主張のみに終始し、それ以上に議論が接近する余地もなかったのであるから、この意味において懲戒の程度に関する審議が行なわれたものと認めるを妨げない。
 更に会社は最後の二回の経営協議会において組合側に控訴人本人の弁明を聴くためその出席を求めたが、組合側においてこれを拒否したことが前認定によって明らかであるから、会社が控訴人に対してその弁明を聴く機会を与えたことは明らかである。
 従って、予備的解雇の懲戒処分につき就業規則六六条の違反はなく、これを無効という控訴人の主張も結局採用することができない。」