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ID番号 01812
事件名 仮処分異議控訴事件
いわゆる事件名 名古屋放送事件
争点
事案概要  放映予定のないスライドを過失によって放映した者に対する懲戒解雇につき、解雇権の濫用にあたり無効とした事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
裁判年月日 1976年11月24日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ネ) 156 
裁判結果 棄却
出典 労法旬925号63頁
審級関係 一審/名古屋地/   .  ./昭和41年(モ)3000号
評釈論文
判決理由  控訴人は被控訴人の行為は控訴会社就業規則六七条二号所定の懲戒事由「控訴人会社の番組編成方針に反する行為」に該当する旨主張する。
 しかしながら《証拠略》により疎明される同条同号の文理、特に「反する」という文言の使われている点、他方控訴人会社就業規則六六条七号では、同じく懲戒事由として「故意または重大な過失によって業務に支障を生じ、または会社に損害を与えたとき」という表現がとられていること、六七条二号所定の処分が原則として懲戒解雇で極めて重い点を考え合わせるならば、同条同号の懲戒事由は故意による違反行為のみを意味するものと解するのが相当である。ところが被控訴人が本件スライド放映につき故意又は未必の故意を有したと認め難いことは上述したとおりであるから、被控訴人が控訴人会社の番組編成方針に反する行為をした旨の控訴人の主張は採用し難いものである。
 仮りに同条同号所定の懲戒事由が、故意による事犯のみに限定せられるとは解し難いとしても、前記のように重い処分の課せられる点を考え合わせると、少なくとも軽過失による事犯は含まれぬものと解すべきところ、前段説示にかかる控訴人会社送出職場におけるスペーサー使用の状況に鑑みれば、理由五、に判示する控訴人の本件スペーサー使用に関する諸行動を以て、重過失にかかる行為とは評価し難いものである。
 その他本件にあらわれた本件放送事故に関する被控訴人の行為(たとえば被控訴人の本件スライド作成行為、本件スペーサー使用行為の適否、スペーサー使用後の処置の適否等)が、控訴人会社の就業規則六六条所定の懲戒事由のいずれかに該当するとしても、上記のように被控訴人の無断放映の故意の認め難い以上は、行為自体の罪質はそれ程重いものとはいえないし、情状の点についても既に説示したとおり、本件放送事故は当日の送出職場勤務者の不注意が競合して発生したものであること、重大な過失による事故としては控訴人会社では本件よりもより大きい事故が生じているのに懲戒解雇されたのは開局以来被控訴人を以てはじめとすること、本件放送事故における他の責任者の処分は、最高が出勤停止三日の処分にとどまることなどを考え合わせるときには、本件放送事故により控訴人とスポンサーとの間にトラブルが起き、控訴人会社の信用に影響したであろう点を考慮しても、その情状が著しく重くて懲戒解雇事由に該当するものとはなし難いものといわなければならない。そうだとすると被控訴人に対する本件解雇はその他の被控訴人の主張につき考えるまでもなく解雇権の濫用として無効というべきである。