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ID番号 03021
事件名 未払賃金等支払請求控訴事件
いわゆる事件名 タケダシステム事件
争点
事案概要  「女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち年間二四日を有給とする」との就業規則の後段を、「そのうち月二日を限度とし一日につき基本給一日分の六八パーセントを補償する」と変更した場合につきその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法67条(旧)
労働基準法89条1項
体系項目 女性労働者(民事) / 生理日の休暇(生理休暇)
就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 生理休暇
裁判年月日 1987年2月26日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ネ) 3131 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集38巻1号84頁/時報1224号3頁/タイムズ630号259頁/労経速報1282号6頁/労働判例492号16頁
審級関係 上告審/01519/最高二小/昭58.11.25/昭和55年(オ)379号
評釈論文 大和陽一郎・昭和62年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊677〕392頁1988年12月/嶋田隆英、紙子達子・労働法律旬報1166号11~15頁1987年4月25日/野間賢・季刊労働法144号199~201頁1987年7月
判決理由 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-生理休暇〕
 新たな就業規則の作成又は変更によって、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないが、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由としてその適用を拒むことは許されないと解するのが相当である(本件上告審判決及び最高裁昭和四〇年(オ)第一四五号同四三年一二月二五日大法廷判決・民集二二巻一三号三四五九頁参照)。したがつて、本件就業規則の変更が控訴人らにとつて不利益なものであるとしても、右変更が合理的なものであれば、控訴人らにおいて、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないというべきである。
〔女性労働者-生理日の休暇(生理休暇)〕
〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-生理休暇〕
 1 そこで、まず本件就業規則の変更が控訴人らにとつて不利益なものであるかどうかについて検討するに、前記のとおり、「女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち年間二四日を有給とする。」との旧規定から、「女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち月二日を限度とし、一日につき基本給一日分の六八パーセントを補償する。」との新規定へと変更されたのであり、旧規定の下で実際には右の「有給」の内容として基本給一日分の一〇〇パーセントが補償されていたのであるから、本件就業規則の変更は、有給とされる生理休暇一日についての補償が基本給一日分の六八パーセントに減じられた点及び新規定の下では年間を通じて二四日以内であつても月間二日を超える生理休暇については無給とされる点において、控訴人らに不利益をもたらすものと認められる。
 2 そこで、次に、本件就業規則の変更が合理的なものであるか否かについて検討するに、その判断をするに当たつては、変更の内容及び必要性の両面からの考察が要求され、右変更により従業員の被る不利益の程度、右変更との関連の下に行われた賃金の改善状況のほか、被控訴人主張のように、旧規定の下において有給生理休暇の取得について濫用があり、社内規律の保持及び従業員の公平な処遇のため右変更が必要であつたか否かを検討し、更には労働組合との交渉の経過、他の従業員の対応、関連会社の取扱い等の諸事情を総合考案する必要がある(本件上告審判決参照)。
〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-生理休暇〕
 本件就業規則の変更は控訴人らにとつて不利益なものであるが、右変更が合理的なものである以上、控訴人らにおいて、これに同意しないことを理由としてその適用を拒むことは許されず、控訴人らに対してもその効力を及ぼすものといわなければならない。