全 情 報

ID番号 03033
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 狭山交通事件
争点
事案概要  利用者から接客態度が不良であるとの苦情により重ねて注意をされてきたタクシー運転手に対する懲戒解雇がやむをえないものとされた事例。
 労基法一〇六条一項による周知の方法を講じていなくても、就業規則が無効になるものではないとされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働基準法106条1項
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の周知
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 信用失墜
裁判年月日 1987年3月25日
裁判所名 浦和地川越支
裁判形式 決定
事件番号 昭和61年 (ヨ) 193 
裁判結果 却下
出典 労経速報1287号18頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-信用失墜〕
 三 右認定事実によれば、債権者の本件行為は乗客には何ら落度がないのにかかわらず、短距離の乗車であることに、あからさまな不満を表わし、接客に携わる者としては通常許されない暴言をはいたものと言わざるを得ない。それに加えて、前記認定のとおり、債権者には本件行為以前にも同種行為があり、約九か月前には債務者代表者から解雇まで予告されて厳重な注意を受けていることからすると、債権者の本件行為は就業規則第七一条四項にいう「故意又は重大な過失によって会社の信用を傷つけた」ものと言わざるを得ず、かつ、解雇されてもやむを得ないと認められるほどの非難されるべき行為であったと言わなければならない。
〔就業規則-就業規則の周知〕
 四 ところで、債務者が債権者に対し、就業規則を示したことがないことは当事者間に争いなく、本件疎明資料によれば、債務者は、現在の就業規則を昭和五五年八月二六日から労働基準法所定の手続を経て実施しているものの、債権者はこれを一度も見たことがないことが認められる。
 しかしながら、使用者が労働基準法九〇条所定の手続を経て就業規則を制定した以上、同法一〇六条一項による周知方法を講じなかったからと言って当該就業規則が無効となるものではないと解される。そして、本件解雇は実質的にも相当であるから、債務者が債権者に対し就業規則の内容を明示しなかったことが本件解雇の効力に影響を及ぼすものではないものと言うべきである。