全 情 報

ID番号 03036
事件名 地位保全等請求事件
いわゆる事件名 金井学園事件
争点
事案概要  私立大学の建学の精神に反抗的態度をとったということを理由として大学助教授を一般事務職に職務変更し、さらにそれに反抗したことを理由として懲戒解雇を行ったケースで右職務変更および懲戒解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1987年3月27日
裁判所名 福井地
裁判形式 判決
事件番号 昭和56年 (ワ) 105 
裁判結果 一部認容
出典 タイムズ641号115頁/労働判例494号54頁/労経速報1298号8頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 本件についてみると、まず、被告の前示採用時における右労働契約における職種は、その労務提供について法規及び被告の職員任用・任命規定、管理規則の定めるところ並びに前示職種間の処遇の状況に徴し、教育・研究的職務に限定されたものと解すべきであり、本件職務変更は、右労働契約において限定された原告の職種を変更する場合にあたる。そして、前示のような原告の右職種の内容、教官募集の経緯、本件職務変更の前後における原告の処遇状況、及びA大における前示慣行に照らせば、右配転予定条項にいう被告の変更権も、せいぜい原告の教育・研究的職務(当初の職種)に兼ねて一般事務を担当する程度のものにとどまるものというべきであり、原告の助教授職を解き一般事務職員を命ずるような本件職務変更を正当化すべき変更権が被告にないことは明らかである。
 (中略)
 そうすると、本件職務変更につき原被告の個別具体的な合意ないし原告の同意の主張立証のない本件にあっては、右変更を正当とすべき根拠はなく、本訴請求中原告の地位確認を求める部分は、その余の点について判断をすすめるまでもなく理由があるというべきである。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 本件職務変更は、労働契約に違反するものであることは前記第一認定のとおりであって、被告が、このような職務変更を行ったのは、違法な措置であり、更にこれに引続いて行われた本件解雇は、本件職務変更が有効になされたことを前提とするもので、前提を欠き無効であることは前説示のとおりである。
 のみならず、本件解雇自体について検討するに、被告が問題として指摘する原告の被告に対する反抗的態度や非協力的態度その他の各行為は、被告の主張するところによるも、結局、被告の命令や措置に原告が素直に従わなかったということに帰するものであって、それらが直ちに、被告の建学の精神に基づく教育方針を敵視し、これに対する反抗的態度を示したものとみるのは困難である。
 また、学友会会則改正問題における原告の態度は、被告の主張によるも、右問題を討議した被告内部の教授会において、被告の方針に口頭で強く反対したにとどまり、それ以上の挙措に出たことを窺うべき資料はないこと、原告は福井臨工計画に関する出講を被告の措置に従ってとりやめたものであること、被告の原告に対するB大学におけるコロキウム(研究会)への参加の不承諾、原告の講義担当の解任及び研究室の明渡の一連の措置並びに本件職務変更が違法な措置であることは前記認定説示のとおりであるから、原告がこれらの措置に異を唱えたとしても何ら非難すべき筋合ではないこと等を総合して考察すれば、本件解雇の理由には合理性がなく、被告には、その解雇権を濫用した違法があるというべきである。