全 情 報

ID番号 03052
事件名 行政処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 高知郵便局事件
争点
事案概要  郵便局集配課勤務の郵政事務官に対し、前年度および前々年度未消化の年休の繰越分を年間を通じて適宜割り振り消化する、「計画年休」に関連して、所属長が年度の途中において計画休暇の付与予定日を変更するために行った時季変更権の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法39条5項
体系項目 年休(民事) / 計画年休
裁判年月日 1987年5月21日
裁判所名 高松高
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (行コ) 7 
裁判結果 認容・棄却(確定)
出典 労働民例集38巻3・4合併号291頁/時報1249号114頁/労働判例497号6頁/訟務月報34巻1号54頁
審級関係 上告審/01438/最高二小/昭58. 9.30/昭和55年(行ツ)14号
評釈論文 新谷眞人・季刊労働法145号181~183頁1987年10月
判決理由 〔年休-計画年休〕
 27日に参議院議員選挙の投票日を控え、その前日までには極力全部の郵便物について完全配達を遂げる方針を立てて業務の運行をしていた集配課において、24日の50区及び26日の三区について、いずれも予想される要配達物数が常勤職員一名による一日当たりの配達可能量を大きく上回り、常勤職員の増配置の措置を執らなければ全郵便物を26日までに完全に配達できないおそれが生じていた前記の各事情の下で、被控訴人Y1に対して24日に計画休暇を与えること又は被控訴人Y2に対して26日に計画休暇を与えることは、いずれも法39条3項ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たると解すべきである。
(中略)
 年度の途中において時季変更権を行使し、計画休暇付与予定日の変更ができるのは、計画決定時においては予測できなかった事態発生の可能性が生じた場合に限られ、しかも、その場合においても、所属長は、右事態発生の予測が可能になってから合理的期間内に時季変更権の行使をしなければならない。
(中略)
 本件における時季変更が必要な事態の発生は、前記のとおり参議院議員選挙の具体的な投票日が確定したことと六月当時の集配課の普段の業務の実情及び通区状況に基づいて予測が可能であるから、A課長は、投票日が判明した直後にB、C両副課長らと選挙期間中の業務運行の確保の方法などの検討を行った際に、休暇付与予定計画の変更の要否について併せて検討すれば、その直後に、被控訴人らに対して時季変更権を行使できたはずである。それにもかかわらず、その後当該休暇付与予定日の直前まで時季変更権の行使がされなかったのは、A課長及びB副課長らが、当時、計画休暇付与予定日の時季変更権の行使は当該日の前日までに行えば足りると考え、そのために、業務の運行について年度初頭には分からなかった事由がその後に明らかになっても休暇付与予定計画がそのとおり実施可能かどうかについての検討を速やかに行わず、当該休暇付与予定日の前日午後の要員配置を検討する過程の中で初めて行うという運用をしていたことに原因があると解される。
 したがって、A課長が、被控訴人らに対して行った右各時季変更権の行使は、それを必要とする事態の発生の予測が可能になった後、合理的な期間を徒過して不当に遅延してなされたことは明らかであるから、その効力を生じないというべきである。