全 情 報

ID番号 03079
事件名 懲戒処分無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 日本電信電話事件
争点
事案概要  年休の時季指定に対し、適法な時季変更権が行使されたか否かは使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して週休者の中から代替勤務者を確保することが客観的に可能な状況にあったかが重要な要素となるが、本件では右の配慮はなされており時季変更権の行使は適法であり、戒告処分は有効とされた事例。
参照法条 労働基準法39条4項(旧3項)
労働基準法89条1項9号
体系項目 年休(民事) / 時季変更権
裁判年月日 1987年8月6日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ネ) 3628 
昭和61年 (ネ) 13 
裁判結果 一部棄却(上告)
出典 労働民例集38巻3・4号535頁/時報1259号124頁/タイムズ654号156頁/訟務月報34巻4号647頁/労働判例512号73頁/労経速報1321号3頁
審級関係 上告審/   .  ./昭和62年(オ)1555号
評釈論文
判決理由 〔年休-時季変更権〕
 一 当裁判所は、第一審被告が第一審原告らに対してした時季変更権の行使は、いずれも適法であるから、第一審原告らがした各年休の時季指定はその効果を生ぜず、第一審原告らがその時季指定に係る日に出勤しなかつたことは、就業規則五条一項により禁止された無断欠勤に該当し、第一審原告らには、同規則五九条一八号所定の懲戒事由が存在し、第一審被告がこれを理由に公社法三三条に基づいてした本件各懲戒処分は、有効であり、また、無断欠勤を理由とする本件各賃金カットも有効であつて、第一審被告が第一審原告らに対し不法行為に基づく損害賠償義務を負ういわれは何ら存しないから、第一審原告らの本訴請求は、すべて失当であると判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決理由説示欄(原判決三六枚目表二行目(同上、七五六頁一行目)冒頭から七八枚目表八行目(同上、七八四頁末行)末尾まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(中略)
 「第一審被告は、この点につき、第一整備課の勤務形態、労使慣行等に照らし、他の週休予定の一般職員の勤務割を変更して代替勤務者を確保することは、不可能であり、第一審被告としては、右勤務割変更の方法をとつてまで代替勤務者を確保するよう努力する義務までは負つていない旨の主張をするので、この点につき、更に検討する。
 (一) 労働基準法三九条一、二項に定める労働者の年休権については、同法三九条三項本文、一一四条、一一九条一号の法意に照らし、使用者には、できるだけ労働者が指定した時季に休暇を取得することができるよう配慮すべきことが要請されているものというべきである。そして、同法三九条三項ただし書きにいう『事業の正常な運営を妨げる場合』に当たるか否かの判断に際しては、勤務割による勤務体制がとられている事業場においては、代替勤務者の確保の難易がその重要な判断要素となるのであるが、同法が他方では、週休制の原則を実効あらしめるための制度(三七条、一一九条一号)をも設けていることに鑑みれば、代替勤務者に予定される者が週休者である場合にあつては、同法三九条三項ただし書きの時季変更権行使の要件を充足するか否かを判断する基準としては、当該事業場における週休権保障の強弱の度合(週休者の勤務割変更の難易度)、労使の慣行等を参酌して、使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して週休者の中から代替勤務者を確保することが客観的に可能な状況にあつたか否かが重要な要素になるものと解するのが相当である。
(中略)
 (三) 以上の事実関係を前提にして本件時季変更権行使の適否につき判断するに、第一審原告Xの年休の時季指定にかかる九月一六日については、第一審被告としては、通常は、最低必要人員しか配置されていない土曜日に勤務割の指定を受けた一般職員が年休を取得するのに支障のないようにするため、常に同時に一名の管理者をも配置して対処することにしていたのであるが、前記のように、たまたま、成田空港開港百日闘争最終日間近で、第一審被告の施設等に対する無差別的破壊活動が行なわれるおそれが大であるという極めて異常な事態に直面していたところから、第一審被告において、特別保守体制をとることを余儀なくされたため、管理者による欠務補充の方法をとることができなくなつたものであり、かつ、週休日の変更が常時行われている職場であればまだしも(かかる職場であつても、人事考課権を有する管理者が部下職員に対し週休日の振替の可否を打診すること自体、全く問題が無いわけではないが、この点は別論として暫く置くとして。)、週休日の変更はほぼ完全に行われないとの運用が定着している本件第一整備課においても、なお年休権の行使を実効あらしめるため、週休予定者の中から代替要員を確保するよう努力すべきことを管理者に求めることは、管理者に難きを強いることになるばかりか、週休者の権利に影響するところも大きく(殊に本件で問題とされる九月一六日の土曜日は、その前日が敬老の日の祝日に当たり、またその翌日の一七日が日曜日であるから、週休日の固定されている第一整備課の一般職員にあつては、前記Aと第一審原告Xを除けば、他は全員三連休を取れることになつており、各自連休の予定があつたであろうことは、弁論の全趣旨から容易に推認することができるのであるから、本件において、他の週休者に対しその勤務割の変更をして出勤を命ずることは、週休権者の犠牲の上に年休権の行使を肯認することになりかねない。)、これらの諸事情を総合すれば、本件においてB課長が通常の配慮をしただけでは、一般職員による代替要員を確保することも不可能であつたと認めるのが相当である。
 そうすると、B課長が他の代替勤務者確保の可能性につき検討しないまま、最低必要人員に欠員が生ずるので、事業の正常な運営を妨げる場合に当たるとして、時季変更権を行使したことをもつて、年休権の実効性を確保するため使用者に要請される配慮義務を尽くさなかつたというを得ないから、本件時季変更権の行使は、適法であるというべきである。」