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ID番号 03103
事件名 破産債権確定請求控訴事件
いわゆる事件名 中山恒三郎商店事件
争点
事案概要  破産債権の確定事件において、社内預金返還請求権が商法二九五条の適用を受ける債権か否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法18条
労働基準法11条
商法295条
体系項目 労働契約(民事) / 強制貯金・社内預金
賃金(民事) / 退職金 / 破産と退職金
裁判年月日 1987年10月27日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ネ) 110 
裁判結果 棄却(上告)
出典 労働民例集38巻5・6合併号571頁/時報1256号100頁/タイムズ671号218頁/金融法務1198号26頁
審級関係 一審/03796/横浜地/昭61.11.27/昭和60年(ワ)2614号
評釈論文 坂田宏・新倒産判例百選〔別冊ジュリスト106〕232~233頁1990年2月
判決理由 〔労働契約-強制貯金・社内預金〕
〔賃金-退職金-破産と退職金〕
 控訴人らの社内預金中の社宅購入に関連して預け入れられた部分は、控訴人らがその居住している社宅を一般の住宅を購入するよりも有利な条件で買い取るため、将来その代金の一部に充当する目的で他の預貯金を解約するなどして預け入れたものであり、右預入れが社長の指示に基づくものであったとしても、右のように社宅購入の手段としてされたものである以上、控訴人らの任意の預入れというべく、また、実質的に見ても、雇用関係を発生の契機とするとはいえ、雇用関係との法的な結び付きは希薄であって、むしろ通常の不動産取引上の債権に類するものであるから、一般債権と区別して特にこれらを保護すべき理由は見出し難く、商法二九五条の適用対象とはなりえない債権というべきである。社長が控訴人らに対し右社宅購入に係る社内預金の払戻しを受けることを禁じており、また控訴人らの社宅譲渡の要請に応ずることなく日時を経過したことは当事者間に争いがないが、このような事実も右社内預金の法的性質について右のように解するのを妨げるものとはいい難く、控訴人らの挙げる会社更生法や破産法の規定は、その文書が商法二九五条と異なるのみならず、これら規定はいずれも使用人の保護を目的とするとはいえ、その適用される局面はそれぞれ異なり、必ずしも同一に解釈されなければならないものではないから、この点も前記解釈の妨げとはならない。