全 情 報

ID番号 03155
事件名 雇用関係確認等請求事件
いわゆる事件名 洋書センター事件
争点
事案概要  社屋移転反対闘争において使用者に暴行、傷害を加えたこと等を理由とする懲戒解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
裁判年月日 1983年4月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ワ) 10707 
裁判結果 棄却
出典 時報1081号141頁/労働判例408号40頁
審級関係 控訴審/03753/東京高/昭61. 5.29/昭和58年(ネ)1140号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 被告会社が、その旧社屋を明渡し、右明渡し後新ビル建設までの暫定的な移転先として本件仮店舗を選択し、また、同年五月四日から五日にかけて本件仮店舗に移転したことは、いずれもやむを得ないものであったというべきであるにもかかわらず、原告X1及び同X2の両名は、絶対にこれらを認めることはできないとして、両名一体となってあらゆる阻止行動を行うことを決意したものである。そして、仮店舗での就労を命じた被告会社の業務命令を拒否し、既にさいこ社に明渡された旧社屋が自分達の職場であるとして、施錠された鍵を勝手にとりはずして旧社屋内に立入り、仮店舗に出社してきた松井社長の自由意思を抑圧して旧社屋に連行し、五月六日午前一一時四〇分過ぎ頃から翌七日午前三時四五分頃まで約一六時間にわたって、前認定の態様で同人を同所内に軟禁したうえ、同人に対して暴行を加えて傷害を負わせたのである。そればかりではなく、同日以降、所有者であるさいこ社の退去要求及びA社長の業務命令を無視して無権原で同社屋を占拠し続け、これによって、被告会社はさいこ社から警告を受けるに至り、被告会社に新ビルへの優先入居権喪失のおそれや損害賠償請求のおそれを生じさせたのであって、これを放置するならば被告会社の存立そのものを脅かす事態に至らしめたのであるから、これらのことを理由に被告会社が右両名を懲戒解雇したこともまたやむを得なかったものというべきであり、仮に原告らが前記行為を争議行為として行ったとしても、もはや手段としての相当性を大きく逸脱していることが明らかであって、とうてい法の容認するところではないといわなければならない。してみれば、原告X1及び同X2に対する本件懲戒解雇は、社会通念上著しく妥当を欠き、懲戒権者に委ねられた裁量権の範囲を超えたものということができず、むしろ、社会通念に照らして相当として是認することができるものというべきである。