全 情 報

ID番号 03158
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 八幡大学事件
争点
事案概要  三カ月を限った前大学長である六九歳の専任嘱託教授の雇用契約が期間満了で終了するとされたため、右教授が雇止めの効力を争って地位保全の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1983年5月20日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 決定
事件番号 昭和58年 (ヨ) 143 
裁判結果 認容
出典 タイムズ502号169頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 債権者は債務者から昭和五八年一月一日、契約期間を同日から同年三月三一日までと定めた上、その経営するA大学の専任嘱託教授として雇傭されたものであるが、右の雇傭契約については、形式はともかく、その実態は、一応契約期間の定めはあるものの、債務者の内規に従い、任期一年の専任嘱託教授として、昭和五四年四月一日以降既に数回に亘り反覆更新されてきたものであること、内規の定める契約可能な最終期限は債権者が七〇才となる年度末である昭和五九年三月三一日であること及び同大学における過去の実績をみるに、六五才の停年を迎えた専任教授が嘱託を希望し且つ教授会の推薦決議があるときは全て七〇才に達した年の年度末まで専任嘱託教授として雇傭されてきており、条件を同じくする債権者独りが例外的に取扱われるべき合理的理由はなく、債権者としても昭和五八年三月三一日の期間満了後も昭和五九年三月三一日まで今一回の更新継続を期待し信頼すべき客観的状況にあったことが一応認められる。
 右認定の事実によれば、債権者債務者間の雇傭契約は既にして期間の定めのない契約と実質的に異らない状態で存続していたということができるから、債務者において昭和五八年三月三一日の期間満了を理由に傭止めをすることは解雇に関する法理を類推してその効力を判定すべきところ、前認定の債権者雇傭の実態と残存雇傭期間に照らせば、たとえ申請外B講師の採用に当り債権者の進退について若干の議論があった経緯を考慮し且つ私学における人件費節減の必要性を三思しても、なお右傭止めの相当性を首肯しがたいし、他にこれを正当とすべき特段の事由を窺わしめる疎明はないから、右傭止めは結局労使の信義則上許されない無効なものといわなければならない。