全 情 報

ID番号 03193
事件名 地位保全等仮処分異議申立事件
いわゆる事件名 ダイワ精工事件
争点
事案概要  東京の製造会社から直販体制下にある富山市に本店を有する販売会社への出向命令を拒否して解雇された労働者が、右解雇の効力を争った事例。
参照法条 民法625条1項
労働基準法89条1項3号
労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の根拠
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
裁判年月日 1982年4月26日
裁判所名 東京地八王子支
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (モ) 2003 
裁判結果 原決定取消
出典 労経速報1119号3頁/労働判例388号64頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の根拠〕
 前記(四)認定事実によれば、債権者は会社に入社するに際し、「転勤可能者」なる条件のついた折込広告を見て採用面接を受け、採用面接時においても担当者から会社には全国に九つの販売会社がありいわゆる直販制度を採用していることから債権者が入社した場合には全国の右九つの販売会社に転勤することがあること、販売会社に転勤する場合には会社の社員たる地位を保有しながら派遣されることになること、会社と販売会社間の転勤は常時行われていること等具体的な説明を受けたうえ、担当者からの右販売会社に転勤できるか否かという問いに対し直ちには無理だが将来的には可能である旨答えているのであるから、たとえ担当者が出向なる語を用いて説明をしなかったとしても、折込広告に印刷されまた担当者が用いた転勤なる語が実質的には前記在籍出向を意味するものであることを充分了解したうえ雇用契約の申込に対し承諾をなしたものと認めるのが相当である。従って債権者は本件出向につき予め包括的同意をしたものと言うことができる。なお、債権者は転勤先を包括的に同意したわけではなく、東北と名古屋に限定して同意したに過ぎない旨主張し、債権者本人尋問において右主張にそう供述をしているが、右は(証拠略)に照して採用できない。
 以上のとおり債権者には原則として本件出向命令に従うべき雇用契約上の義務があったと一応認めることができる。
〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 ところで債権者が会社の出向命令に正当な事由がないのに従わないことは会社の企業秩序を乱す重大な業務命令違反行為となるから、前記就業規則第一六条第四号のその他前各号に準ずるやむをえない事由に当るとしてなした会社の本件解雇の意思表示は有効である。