全 情 報

ID番号 03214
事件名 不当利得金返還請求事件
いわゆる事件名 株式会社ダルマ薬局事件
争点
事案概要  仮処分によって賃金の仮払を受けた労働者が雇用契約上の地位確認を求める本訴で敗けたことを理由として、賃金の仮払を行った使用者が右金員を不当利得であるとして返還を求めた事例。
参照法条 民法704条
民法703条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 無効な解雇と賃金請求権
裁判年月日 1981年2月27日
裁判所名 仙台地
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (ワ) 619 
裁判結果 認容(確定)
出典 タイムズ451号106頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-無効な解雇と賃金請求権〕
 思うに仮処分は、債権者(申請人)が本案訴訟で勝訴することを前提とし、係争の権利関係が本案訴訟において確定されるまでの間、これを被保全権利として暫定的仮定的に応急的処置を履行せしめるものであるから、後日本案訴訟において被保全権利とされた権利関係がもともと存在しなかつたことを理由に、債権者(申請人)が敗訴して、これが確定するに至つた場合は、当該仮処分命令はその前提を失うのみならず、これによつて形成されていた仮の履行状態が、当初に遡つて根拠を欠くこととなる。従つて、これが原状に回復されるべきことは当然であつて、その理は、仮執行宣言付判決に基づき給付がなされた後、上訴審において原告敗訴の判決があつたときは、右仮執行宣言付判決に基づき給付されたものが不当利得として返還され、その原状回復がなされるべきもの(民事訴訟法一九八条)と同一であるといわなければならない。
(中略)
 本件のような「雇傭契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める」旨の仮処分は、いわゆる任意の履行を期待する仮処分であり、また、右仮処分によつて形成された法律状態は訴訟法上の法律状態であつて、右の仮処分がなされたからといつて、これにより当事者間に新たに私法上の雇傭関係が発生したり或いは、賃金請求権が発生したりするものではないから、右の仮処分後被告が原告に対し就労を請求したのに対し、原告がこれに応じなかつたとしても、これに応ずるか否かは原告の自由であるのみならず、これに応じないからといつて、新たに私法上の賃金請求権が発生するものでないことは明らかである。