全 情 報

ID番号 03230
事件名 未払賃金請求
いわゆる事件名 熊本営林局多良木営林署事件
争点
事案概要  作業主任者の職務に従事する命令がなされたにもかかわらず、土場の掃除など生産手としての職務に従事した場合、それは職務の遂行としての労務の提供とはいえないので賃金請求権は発生しないとされた事例。
参照法条 労働基準法24条
民法623条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権
裁判年月日 1981年9月17日
裁判所名 熊本地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ワ) 356 
裁判結果 (控訴)
出典 労働判例374号82頁/労経速報1108号17頁/訟務月報28巻2号225頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権〕
 ところで原告の本訴請求は、原告は、右時間帯において、作業主任者の職務は行わなかったが、土場の掃除、盤台上での枝打ち、玉切り、積み込み作業など生産手としての職務を行ったから、本件業務命令の有効、無効にかかわらず、生産手としての賃金が支払われるべきであって、これを請求するということにある。
 しかし国家公務員法九八条一項の規定によれば、職員は、職務を遂行するについて上司の職務上の命令に忠実に従わなければならず、その賃金は、法令に従い、かつ、上司の明示又は黙示の指揮命令に従って職務に従事したときに初めて発生すると解すべきものであるから、職務命令に反し指示された以外の作業に従事したとしても、それは職務の遂行としての労務の提供とは言えず、自己の職務を尽くしたことにならないので、賃金請求権は発生しないというべきである。すなわち原告が本件業務命令に反して土場の掃除、盤台上での枝打ち等を行っていたとしても、それでは原告の賃金請求権は発生しないのである。
 なお、原告は、作業主任者の職務と生産手の職務は明確に区分されており、作業主任者の職務に従事しなかったからといって、生産手の職務にも従事しなかったことになるわけではないと主張する。確かに作業主任者の職務内容と生産手のそれとは明確な相違があるが、機械集材作業の実際において併任の作業主任者は、作業主任者の職務に従事しつつ、その余裕をみながら、生産手の職務(ただし行いうる職務内容は「暫定覚書についての労使意思疎通点」によって限定されている。)をも行うものであり、併任の作業主任者が日々の機械集材作業において行う生産手としての職務が内容的に量的に一定しているわけでもない。併任の作業主任者が機械集材作業において行う労務の提供は、作業主任者としての職務と生産手としての職務とを同時に行う不可分的給付とみるべきものであり、原告はそれをしなかったのである。法令上、機械集材作業は作業主任者の指揮命令がなければこれを行うことができないことになっており、現に本件当日は原告が作業主任者の職務に従事しなかったために班全体が機械集材作業を行えなかったのである。機械集材作業が予定された日に、作業主任者である原告が、生産手が行うような労務の提供だけを行ったとしても、それは意味のないことである。したがって原告の右主張は理由がなく生産手としての賃金請求権も発生しない。