全 情 報

ID番号 03254
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 帝国興信所事件
争点
事案概要  勤務成績の不良を理由とする興信所調査員に対する解雇につき、いまだ就業規則にいう「業務の能力がいちじるしく劣っているとき」という解雇事由に該当しないとした事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1980年3月27日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ヨ) 633 
裁判結果 認容
出典 労働判例349号37頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 (五) 以上の各事実を総合して考えれば、申請人の本件解雇前一年余の間(昭和五一年度以後)の勤務成績は、勧誘成績においてやや劣り、調査件数及び点数において他の調査員とさらに差がつき、調査日数においてはその差はかなり大きく、被申請会社の成績評価方法を前提とするかどうかにかかわりなく、一応低能率と評価されるものといわなければならない(なお、申請人のなした調査内容が、客観性、正確性の点で、他の調査員に比し格別劣っていたことの疎明はないが、それが格別優れていたことの疎明もない)。しかし、これらの各成績が被申請会社における損益分岐点を下まわるものであることの疎明はなく、また、(証拠略)によって疎明されるように、被申請会社の給与構成では、勤務成績が一定の基準に達しなければ奨励金の支給を受けられなくなるなど、調査員の勤務成績によりその賃金額が調整される仕組に(ママ)となっていることも考慮すれば、申請人の業務従事によって得られる被申請会社の収入が申請人の雇用を継続することによる必要経費に及ばないことについての疎明もないといわざるをえないし、さらに、申請人の低能率により被申請会社の正常な業務の遂行に継続して支障が生ずることが明らかといえる程度に至っているものとは未だ認めることはできない。そうすると、申請人の業務能率は全体的に劣っているとはいえても、未だ就業規則二二条二号にいう業務能率の低劣が「いちじるしい」ことの疎明はないといわなければならない。
 6 就業規則二二条三号事由について
 申請人に本件解雇当時、業務習得の見込みがあったかどうかを検討するに、右は申請人が本件解雇当時信用調査員としての業務を習得していなかったとの判断が前提となると言うべきであるところ、申請人は、前示のとおり、本件解雇当時、神戸支店の他の信用調査員と比較して著しく劣っていたとは言えないばかりか、申請人の調査部へ配転されてから本件解雇までの勤務成績は被申請会社主張のとおりであるが、これによると、申請人の一カ月の消化件数及び点数は配転当初のそれと本件解雇前四カ月間のそれとを比較すると格段に向上していたことは明らかであり、これらの点と(証拠略)によって疎明されるように、申請人は前記のように被申請会社に勤務して後欠勤も少なく、調査活動等に際しての勤務態度も真面目で、その性格は同僚から小心とみられる程律義なところがあることやその上司から再度の内勤への職種変更の勧告をも拒否し、調査員として成功することを強く希望していたこと及び大学三年まで進学していた学歴等の事情も考慮すると、申請人は本件解雇当時前記就業規則二二条三号にいう「業務習得の見込みがない」者に該当しなかったというべきである。