全 情 報

ID番号 03262
事件名 配置命令取消請求事件
いわゆる事件名 堺市立保育所事件
争点
事案概要  市立同和保育所に長年勤務する主任保母に対する一般保育所への配転命令が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
裁判年月日 1980年5月26日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (行ウ) 42 
裁判結果 一部棄却・却下(控訴)
出典 行裁例集31巻5号1206頁/時報977号114頁/タイムズ427号113頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
5 原告は、被告のいう同和保育の内容と方法を全市的に深めるとの基準は不当であり、不合理であって、結局のところ、本件配転は、同和保育に関し堺市が推進している解同の運動方針に反対する原告を、その考え方ないし思想の故にA保育所から排除する目的をもつてなされたものである旨主張する。
 しかしながら、被告のいう右の基準なるものは、前記認定のとおり、一般保育所の保母にも同和保育の重要性を認識し、その理解を深めさせるため、同和保育所の保母と一般保育所の保母との人事交流をはかるとの趣旨であつて、右の基準も、他のそれと同様配転の一基準として首肯し得るものであり、それ自体何らの不合理性は見出せない。
 また、同和問題に対する認識、評価、同和行政の推進などに関しては、さまざまな意見の対立がみられることは周知のとおりであつて、それらの問題点についてその当、不当ないし適法、違法を判断することは極めて困難である。本件に則して詳言すれば、同和行政は、国民に対して基本的人権の享有と法の下の平等を保障した憲法の理念に則してなされなければならず、同和対策行政のめざす愛益が同和地域の住民に等しく及ぶことが必要であつて、そのため、行政機関は同和行政の具体的な施策をたてるについて、公正、平等の点に格別の配慮をしなければならないのであるが、右の場合に何が公正、平等な措置といえるかについては一般的に決定することは困難であるといわなければならない。
 しかし、仮に、原告の同和行政ないし同和保育の推進に関する考え方と堺市のそれに対する基本方針との間に原告主張のような差異があり、原告の考え方がより公正、平等であるとしても、そのことから直ちに本件配転が原告の思想の故にA保育所から排除する目的でなされたものと断定することはできない。すなわち、前記四の2において認定したように、堺市の当局者は、原告をその活動の故に快よく思つていなかつたことは推認し得るが、本件配転は前記五の2において判断したとおり、首肯し得る基準に基づいてなされたものであつて、原告が選考されたことにも合理的理由があり、これが決定的原因となつていることが認められるから、本件配転をもつて、原告の思想の故になされたものと推測するこはできない。