全 情 報

ID番号 03264
事件名 休職処分取消請求事件
いわゆる事件名 東京都職員事件
争点
事案概要  軽犯罪法違反の罪で逮捕され公訴を提起された都の清掃局作業員に対してなされた起訴休職処分の効力が争われた事例。
参照法条 地方公務員法28条2項2号
日本国憲法13条
体系項目 休職 / 起訴休職 / 休職制度の合理性
休職 / 起訴休職 / 休職制度の効力
裁判年月日 1980年7月16日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (行ウ) 133 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集31巻4号805頁/労働判例345号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休職-起訴休職-休職制度の合理性〕
 地方公務員に対する起訴休職の制度は、右のような悪影響ないし支障を生ずるおそれのある職員をその身分を保有させたまま、一時的に職務に従事させないこととし、それによつて職場規律ないし秩序の維持、公務員の職務遂行に対する住民の信頼ひいては官職に対する信頼の保持及び公務の正常な運営の確保を図ろうとするものである。しかも、この制度は、必要的休職の制度でなく、以上のような趣旨目的に制約された範囲内における任命権者の裁量によつて行われるものなのである。また、休職を命ぜられた職員は、公務に従事することができないけれども職員としての身分は保有し、その休職の期間中、給料、扶養手当、調整手当及び住宅手当のそれぞれの一〇〇分の六〇に相当する額の支給を受けることができることとされているのである。
 このように、起訴休職制度は、合理的な理由に基づいて公益上必要最小限度内の制限ないし不利益を課することを定めたものであるから、憲法一三条に違反するものではない。
〔休職-起訴休職-休職制度の効力〕
 原告は、公訴を提起された犯罪行為を行つていないし、また、客観的にみても犯罪の成否が微妙である本件においては、被告主張のような起訴休職の理由は生じない、と主張する。
 しかしながら、公訴事実の存否は、本来当該事件の係属する刑事裁判所において確定されるべき事柄であるから、任命権者は、起訴休職処分をするにあたつて、公訴事実の存否についてまで立入つて調査判断する必要はなく、その公訴事実に基づく公訴の提起によつていかなる支障、悪影響が生ずるかを判断すれば足りるものというべきである。
 したがつて、原告が公訴を提起された犯罪を行つていないとか犯罪の成否が微妙であるというような事情の存在は、被告主張のような支障悪影響の発生を否定することになるものではなく、本件起訴休職処分の適法性を左右する事由とはなり得ないものというべきである。