全 情 報

ID番号 03274
事件名 地位保全申請事件/金員支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 大照金属事件
争点
事案概要  会社解散に伴う事業閉鎖を理由とする解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法16条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更
裁判年月日 1980年11月7日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ヨ) 1779 
昭和53年 (ヨ) 1507 
裁判結果 認容(控訴)
出典 時報995号124頁/労働判例352号36頁/労経速報1083号19頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止〕
 1 被申請人と組合との間で本件解雇当時効力を有していた労働協約(以下本件協約という。)一八条には「会社は、左記の場合以外組合員を解雇しない。1本人が死亡したとき2本人の意思により退職を申し出たとき3懲戒解雇を必要とするとき4定年に達したとき5休職期間が満了してもなお休職事由が解消しないとき6その他会社・組合協議の上必要あるとき。」と規定され、さらに同五条には「会社は企業の合併、分割、譲渡、解散、縮小、休廃止、移転等は会社が決定するものであるが、決定するについては事前に組合と協議し、組合の納得を得てから施行するものとする。」と定められていることはいずれも当事者間に争いがない。
 ところで、本件協約における事前協議条項は、企業の改廃、すなわち合併、縮小、閉鎖、解散等組合員の身分や生活に重大な利害関係がある事項については、改廃を決定するにあたり組合の関与を認めることにより使用者の恣意を排除し、組合員の労働条件に関する使用者の措置が適正になされることを確保しようとしたものであると解すべきである。
 したがって、右条項に明文の規定は存しないが、事業閉鎖や会社解散に不可避の解雇が、組合員にとって最も重大な労働条件の変更であることは明らかであるから、右条項の事前協議の対象に含まれるものと解するのが相当である。
 もっとも、右事前協議条項にいう「組合の納得」とは、すべての場合に組合の理解、了解、承認を得るまで協議を尽す必要があると解するのは相当でなく、会社解散とそれに伴う従業員の解雇等が会社のおかれた客観的状況から必要かつやむを得ない措置であると認められ、かつ会社が組合に対して右の事情を客観的資料等に基づき出来る限り詳細な説明をし、理解を求むべく真摯な努力をしたにも拘らず、組合側がその実情を無視して協議の進行に応じようとしない場合には、会社は協議を打ち切り、解散、解雇等を行うことができると解すべきである。