全 情 報

ID番号 03281
事件名 地位確認請求事件
いわゆる事件名 新日本製鉄化学工業事件
争点
事案概要  頚肩腕症候群に罹患したキーパンチャーに対し、右疾病を私病として扱い「業務外の傷病による欠勤が引き続き六か月を越えたとき」には休職とする就業規則を適用し、休職期間の満了にともない退職扱いをしたことにつき、右疾病は業務上のものであり、就業規則の適用を誤っており、右退職扱いは無効とされた事例。
 就業規則に定める業務上疾病の認定手続を履行しなかった従業員が、自己の疾病が業務上のものであることを主張することにつき、信義則に反しないとされた事例。
参照法条 労働基準法19条
労働基準法75条
労働基準法89条
民法1条1項
労働者災害補償保険法1条
体系項目 休職 / 休職の終了・満了
裁判年月日 1979年1月29日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ワ) 603 
裁判結果 認容(確定)
出典 時報930号101頁/労働判例319号62頁/労経速報1017号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休職-休職の終了・満了〕
 4 結局、原告の作業内容、作業環境、症状の内容及びその推移と作業内容との相関関係が前示のとおりであること、原告の疾病についての右各医師の診断結果が右認定のとおりであることを考え合わせ、更に前認定のとおり業務に起因して生じた頚肩腕症候群は一進一退の経過をたどりながら回復していくのが通例であり、軽快したと判断されても、手指を使う作業に従事したり、冷房等の刺戟に合うとたちまち症状が再燃する例が多いことを考慮すると、原告は被告会社Yにおいてキーパンチ業務に従事したことにより昭和三八年八月ころに業務に起因して生じる頚肩腕症候群に罹患し、症状は次第に悪化していって昭和四一年六月に第一回目の欠勤に入ったこと、その後の加療により症状は軽快に向かっていたが、前認定のように休職期間満了により退職となることを避けるため治癒するに至らないまま復職し、そのため、復職後はキーパンチ業務から離れたが、やはり手指を使う作業に従事し、冷房等の影響もあって症状が再燃し、第一回目の欠勤当時と同様の症状となって再び欠勤するに至ったものと認めるのが相当である。
〔休職-休職の終了・満了〕
 就業中の発病について上司への申出義務を定めている就業規則の規定に違反し、また、原告が被告の指定する病院で受診することを拒否し、自己の選択した医師の治療しか受けていないという事実があったからといって、原告が被告に対し自己の疾病が業務上のものと主張することが信義に反するものということはできない。
 四 そうすると、被告会社が就業規則五〇条一項一号の規定により第二回目の欠勤の日から六ケ月経過した日に原告に対し休職を命じ、それから一年経過した昭和四五年五月一日同規則五〇条二項に定める休職期間が満了したとし、同条四項の規定により同日以降原告を退職したものとして取扱っているのは、就業規則の適用を誤っており、原告は右各規定により退職となるいわれはない。したがって、原告は依然として被告に対し雇用契約上の地位を有するというべきである。