全 情 報

ID番号 03305
事件名 配転命令効力停止仮処分申請事件
いわゆる事件名 ブック・ローン事件
争点
事案概要  独身女子社員に対する和歌山から大阪への配転命令につき、勤務場所を和歌山市とする暗黙の合意があったとして右命令を無効とした事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
裁判年月日 1979年7月12日
裁判所名 神戸地
裁判形式 決定
事件番号 昭和54年 (ヨ) 260 
裁判結果 認容
出典 労働判例325号20頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 ところで、勤務の場所は、被雇用者である債権者にとってその当時及び将来の生活上きわめて重要な意義を有するものであることはいうまでもないから、この点と前記の各認定事実を綜合すると、とくに勤務場所に関して明示的に限定する旨の合意がなされたことの疎明資料のない本件においても、本件当事者間の労働契約においては、債権者の勤務場所を和歌山市とする旨の暗黙の合意がなされていたものと推認するのが相当である。
 なお、債務者の就業規則(疎乙第一号証)には、異動に関し、「会社は業務の必要により社員に異動(転勤、配置転換)を命じることがある。この場合正当な理由なくこれを拒否してはならない。」旨の規定(第八条)があるが、この様な就業規則の規定が存在することだけから、直ちに前記の勤務場所についての合意の存在を当然否定しうるものと解すべきでない。しかし、右規定の存在を考慮して本件契約内容をさらに検討すると、前記の契約上の勤務場所の変更は、原則として債権者の同意がない限り債務者が一方的になし得ないものであるが、契約後の事情変更等により、債務者側の業務の都合上その勤務場所の変更をしないことが著しく不相当であり、他方、債権者が右変更に応じても特に不利益を生じないような事情が生じているなど特段の事情があるときには、勤務場所について債務者の一方的変更権を留保したものと解するのが相当である。
 (中略)
 そうすると、債権者の同意のない本件配転について、債務者が一方的に右配転をなしうべき特段の事情の存在について疎明がないものといわなければならないから、債権者の勤務場所の変更を命じた本件意思表示は、債権者のその余の主張について判断するまでもなく、無効であるといわざるを得ない。