全 情 報

ID番号 03342
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 清心会山本病院事件
争点
事案概要  自己の政治的思想に基づき組合を批判するビラを配布し、右ビラ配布についての組合の警告に抗議するビラを配布したこと等を理由として組合を除名され、ユニオン・ショップ協定に基づいて解雇された者が右解雇の効力を争った事例。
参照法条 民法1条3項
民法536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ユニオンショップ協定による解雇と賃金請求権
裁判年月日 1978年3月20日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ワ) 1735 
裁判結果 (控訴)
出典 労働民例集29巻2号149頁/時報915号117頁/労働判例295号36頁/労経速報984号3頁
審級関係 控訴審/00918/大阪高/昭55. 7.17/昭和53年(ネ)684号
評釈論文 阿久沢亀夫・判例評論247号43頁
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-ユニオンショップ協定による解雇と賃金請求権〕
 被告Yが原告らに対し労働協約四条に基づき解雇したことは前記のとおり当事者間に争いがなく、被告組合の原告らに対する除名処分も無効であることは前記のとおりである。そして、被告ら間にユニオン・ショップ協定が締結されている場合において、除名が無効な場合には被告Yは解雇義務を負わないものと解すべきであり、他に解雇の合理性を裏づける特段の事由について主張、立証もないのであるから、原告らのその余の主張について判断するまでもなく、被告Yの右解雇は権利の濫用として無効であるといわなければならない。
 (中略)
 ユニオン・ショップ協定は原告らと無関係に被告ら間において任意に締結したものであり、たとえ、被告Yが除名処分の当否について調査しうる立場にないとしても、同被告が任意で締結した協定を理由に、右協定と直接関係のない同被告と原告ら間の労働契約における自己の債務の不履行について、不可抗力の事由として主張することは許されず、もし右主張が許されるとするならば契約当事者はいつでも任意に不可抗力の事由を創り出すことができることとなつて極めて不当である。除名処分に関する被告組合の判断の誤りは原告らと被告Yの間においてはユニオン・ショップ協定の当事者である被告Yの方でその危険を負担すべきものというべく、被告Yの右主張は失当であり、同被告は原告らに対し賃金支払義務を有する。