全 情 報

ID番号 03364
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 航空自衛隊防府南基地第一航空教育隊事件
争点
事案概要  自衛隊員が夜間道路を行進中に後方からきた自動車に追突されて死亡した事故につき国の安全配慮義務違反が問われた事例。
参照法条 民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1978年7月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (ワ) 10201 
裁判結果 一部認容・棄却(確定)
出典 時報912号77頁/タイムズ381号141頁/訟務月報24巻9号1755頁/交通民集11巻4号1084頁
審級関係
評釈論文 山本隆司・法律時報52巻11号115頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 被告は、信義則上、自衛官として服務する亡Aに対し、国若しくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理に当たつて、その生命及び健康を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負つているものであるところ、上叙認定の事実によれば、被告の右義務の履行補助者である第一小隊長Bは、第一小隊が交差道路から本件道路に進入した際、本件道路北端(右側)で人員及び装具の点検をした後偉容を整えて正門前で本件道路を横断した場合に生じうる交通渋滞を回避するため、第一小隊をして、そのまま本件道路を横断させ、本件道路南端(左側)に整列させて人員及び装具の点検をし、偉容を整えて行進を再開させたものであるが、このことが、自衛隊法第三条及び第五二条にいう自衛隊の任務の達成及び隊員の服務の本旨に則応し、かつ、本件道路の交通渋滞を回避するためやむをえない措置であつたとしても、隊員らの行進方法は行進の要則により規制され、上官の命令のない限り、自由に通行方法を選択することは勿論、後方車両の有無を確認することも許されていないのであり、ヘルメットを着用し、銃を背負い、視野及び行動が物理的にも制限されていたうえ、夜間、通行車両運転手から識別の困難な濃緑色の作業服上に紺色の雨衣を着用していたのであるから、かかる隊員らを本件事故現場のような暗い雨中の道路左側を約二メートル幅の隊列で歩行させる以上、当時、車両の通行が少なく、道路幅員が一三メートルあつたことを考慮に容れても、従前の右側通行時以上に通行車両との接触事故の予防に注意を払い、後部の交通整理員あるいは各分隊の班長及び班付の配置を解くことなく、交通整理員らをして行進中の隊員らに後部車両の接近を警告させるほか、懐中電灯等により後部車両の運転手に対し隊列の存在につき注意を喚起させるなどして、行進中の隊員の生命及び身体を後部車両との接触事故から保護すべく配慮しつつ、隊員らの行進を管理すべき義務があつたものというべきである。
 しかるに、前記認定のとおり、被告の履行補助者Bは、このような配慮をすることなく、第一小隊を本件道路左側に整列させた際、それまで配置していた交通整理員及び各分隊の班長及び班付の配置を解き、隊列内を歩行させたものであるから、この点において、被告は亡Aに対する安全配慮義務を怠つたものといわざるをえない。