全 情 報

ID番号 03426
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本電信電話公社事件
争点
事案概要  来客と応対中の営業課長に対し大声で姓を呼び捨てにした上、後にその行為を諭した同課長を殴打・転倒させ全治三週間の傷害を与えたことを理由とする電々公社職員に対する懲戒免職処分の効力が争われた事例。
参照法条 日本電信電話公社法33条
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
裁判年月日 1976年1月22日
裁判所名 京都地
裁判形式 決定
事件番号 昭和50年 (ヨ) 837 
裁判結果 認容
出典 訟務月報22巻3号686頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 被申請人の近畿電気通信局長は「申請人は、昭和五〇年九月一八日京都西山電報電話局営業課事務室において勤務中、来客と応待していた営業課長に対して大声で姓を呼びすてにし、後刻その行為を諭した同課長の左頬を殴り胸部を押して転倒させ傷害を与える暴行をはたらいた。これらのことは就業規則第五九条一号、三号、七号、八号、一八号に該当し、その情極めて重く、公社職員としてはなはだ不都合である。」との理由を以て昭和五〇年一〇月三日日本電信電話公社法第三三条により免職し、同月四日その旨申請人に告知した。(ただしこの処分に関し、申請人の弁解を聴取した形跡はない。)
 (六) Aの受傷は全治三週間の通院加療を要し、軽傷とは言えないが、その主傷である臀部打撲症は、たまたま足許にボテ箱があつてこれに転倒したためであり、偶然の要素が強く、直接の打撃によるものではない。
 (七) 昭和四七年三月以降昭和五〇年六月までの間に被申請人がした懲戒処分例によると、懲戒免職に付したのは、窃盗、涜職等犯状が重く、被処分者において弁解の余地はないと認められる事案で、単純な暴行傷害の事案につき免職とした例はない。かつ、申請人にはこれまで処分歴はない。
 (八) 昭和五〇年九月二二日申請人は全電通京都支部書記長より「謝るつもりはあるか。」と言われ、否定的な返事をしたが、これは従来のいきさつからにわかに謝罪の言葉を口に出し得なかつたことと、まさか免職処分のような重大な結果になろうとは予想していなかつたからであり、暴行傷害の行為を働いたこと自体に対しては悔悟している。
 (九) 申請人は解雇時基本給金一〇万九、七〇〇円、暫定手当等金二、一〇〇円、合計金一一万一、八〇〇円の賃金を得ていたものであり(この点当事者間に争いがない。)、これによつて生活をしていたものであつて、今回の処分によつてこの収入が断たれるとともに、現在居住の公社寮も立退きを迫られている。
 二 以上の事実によれば、被申請人が本件免職処分の理由として掲げた非違行為は、客観的事実と大略合致し相当であるが、右一の(六)ないし(八)の事実を考慮するとき、これを懲戒するに最も重い処分である免職処分を以てするのは苛酷に過ぎ、結局解雇権の濫用として無効である、と判断せざるを得ない。