全 情 報

ID番号 03455
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 学校法人学文館事件
争点
事案概要  沖縄返還協定批准反対集会に参加し逮捕、勾留され自退謹慎および停職処分に付された私立高校の教師が、右処分を拒否して登校し同僚、生徒に対し処分の違法性を訴えたことを理由として懲戒免職処分とされたことにつきその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 政治活動
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行
裁判年月日 1976年10月19日
裁判所名 前橋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (ヨ) 74 
裁判結果 却下(控訴)
出典 労働民例集27巻5号543頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務外非行〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-政治活動〕
 前項までの認定事実によれば、申請人は過激派と目される組織の主催する集会に参加したことにより、被申請人から自宅待機命令を受け、これを拒否して登校を続け、理事長、校長、同僚、父兄等との話合やこれらによる説得に応ぜず、日増しに同僚、父兄との対立を激化し、その間、被申請人の科した一切の処分を無視した行動を一貫して続け、その結果、被申請人の学校経営の正常化を著しく妨げ、申請人の右行動がさらに継続されれば、経営と教育の両面において、私立学校存立の基礎そのものを危機におとしいれることになることがきわめて明白であつたと認めることができるが、被用者にこのように極端な規律違反の行状がある場合には、企業の存立とその健全な活動について、そこに就労する被用者および地域社会(本件の場合とりわけ生徒およびその父兄)に対して最終的に責任を負う私立学校経営者としては、右規律違反の被用者に対し明示の懲戒規定がない場合でも企業秩序維持のため緊急やむをえざる制裁措置として懲戒免職処分をもつて臨むことができるというべきであつて、このように企業の存立にかかわる深刻な状況を目前にしながら、たまたま明示の懲戒規定がないというだけの理由で、秩序維持の措置をとることもできず拱手傍観しなければならないものとすることは、被申請人のごとき形態の企業にとつては、まことに酷なことといわざるをえない。
 もちろん、右のような場合であつても懲戒免職処分というものの重大性に鑑み、被処分者の弁明を聞き、また、処分についてはその理由を示す等の正当な手続は履践しなければならないというべきであろう。