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ID番号 03514
事件名 勤勉手当請求事件
いわゆる事件名 富山県職員事件
争点
事案概要  地方公務員たる中学校教員の勤勉手当につき、教育委員会が五段階の基準を定めただけでは具体的請求権は発生せず、個別的な決定が必要とされた事例。
参照法条 労働基準法24条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
裁判年月日 1974年4月5日
裁判所名 名古屋高金沢支
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (行コ) 3 
裁判結果 棄却(確定)
出典 高裁民集27巻2号83頁/行裁例集25巻4号225頁/時報753号89頁/タイムズ313号273頁/タイムズ316号229頁
審級関係 一審/01339/富山地/昭47. 7.21/昭和45年(行ウ)1号
評釈論文 房村精一・ひろば28巻7号75頁
判決理由 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
国といわず、いずれの地方公共団体とを問わず、およそ件命権者が当該職員の勤勉手当における成績率を決定するに際しては、予め何らかの基準を設定し、その基準に則り成績率を決定していることが多いのは公知の事実であり、また右基準の内容も千差万別であることも、当審証人Aの証言により認められるところである。これはいうまでもなく、勤勉手当が国又は地方公共団体の支出予算の範囲内で支給されることにかんがみ、支出額の予め計数可能な基準の設定を必要とすること、大量の行政事務を短期間に迅速処理すべきこと、庁内全体の適正公平な処理等の要請から不可避的にその設定を促しているものということができるのであろうが、同A証人の証言にもあるように、成績率決定の基準として、成績普通者と成績不良者の二段階のみを設けているにすぎない行政庁のあるのをみてもわかるように、基準を設定しても、任命権者の当該職員の成績率を決定するに際しては依然として個別的具体的な成績率の決定という裁量処分権の行使によらなければ、当該職員の成績率は最終的に確定されえないのである。
 (3) これに対し、控訴人らは、富山県教育委員会が定めた本件五段階による成績率は基準としては極めて明白であり、高岡事務所長において当該職員の成績率を決定するに当つては裁量権限を行使すべき余地は全くないではないかと主張するのである。
 なるほど、県教委の設けた五段階による本件成績率は基準として一応明確なものといえようが、しかし右基準は、任命権者が当該職員の具体的個別的な成績率を決定するに際しての重要ではあるが一つの準則にすぎないのであつて、準則のすべてであると解することは相当ではないのである。けだし、任命権者は当該職員の成績率を定めるに当つては当該職員の勤務成績を決定するに足りると認められる事実を基礎として右事実を考慮しながら成績率の判定を行なうのが、右決定権行使の基本的義務だからであり(前記人事委員会の各任命権者あての指針参照)、また、このような意味での裁量権そのものは行政庁内部における基準が設定されたからといつて、直ちに消滅するとも考えられないからである。-控訴人らは、最高裁昭和四六年一〇月二八日判決(最高裁民事判例集二五巻七号一〇三七頁所収)を援用し、行政庁が第一次的裁量権を行使し、具体的な基準を設定すれば、その具体的基準には規範性が生じ、行政庁が右基準の適用を誤れば、当然に司法の判断の対象となると主張するのである。