全 情 報

ID番号 03530
事件名 免職処分取消請求事件
いわゆる事件名 全逓都城郵便局事件
争点
事案概要  滞留郵便物の処理作業中に執務を妨害し、管理職に暴行傷害を加えたこと等を理由とする郵政職員に対する懲戒免職処分が相当とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
国家公務員法82条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
裁判年月日 1974年7月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (行ウ) 98 
裁判結果 棄却(確定)
出典 訟務月報20巻10号124頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 原告が前記非違事実(二、2及び3)につき公訴を提起され、暴行及び傷害の罪につき罰金一万円の刑が確定したこと(昭和四二年一一月二五日上告棄却)、これに伴い、原告が昭和三五年一月二八日に起訴休職処分に付され、昭和四二年一二月一日に復職したことは当事者間に争いがないところ、本件免職処分は、右の刑事罰並びに約八年間に及ぶ休職処分に追討ちをかける過酷な制裁であると原告は主張するけれども、右の刑事罰にかかる犯罪事実並びに休職処分にかかる公訴事実は、本件懲戒事由たる非違事実(前記二、1から4まで)の一部(同2及び3)と相蔽う関係にあるにとどまるし、また、その相重なる関係の事実についても、刑事罪及び休職処分が科せられたことから当然に懲戒処分が控制されもしくは酌量軽減されるべき筋合のものではないから、右刑事罰及び休職処分に続いて本件懲戒免職処分がおこなわれたことをもつてただちに過酷な仕打ちというのはあたらない。さらに、原告は、本件非違事実(前記二4)においてストライキを指導した理由によりその最高責任者である全逓九州地方本部執行員Aが停職一月の懲戒処分を受けたのに比較して、右ストライキ実施の補助行為と僅か罰金一万円に処せられた程度の暴行傷害との非違事実により原告が懲戒免職処分に付せられることは、著しく均衡を失し、かつ、必要な限度を超えたものとして違法たるを免れないと主張する。しかしながら、原告の本件非違行為の原因、動機、態様、状況、結果等はまえに認定したとおりである。既往の懲戒処分歴として(このことは当事者間に争いがない。)宮崎県高崎郵便局において勤務時間内職場大会の開催を指導したかどにより昭和三四年四月六日に戒告処分を受けてその将来を戒められており、さらに(証拠省略)によれば、前記二、3の非違行為の翌日(一二月九日)においても、原告は勤務時間中であるにもかかわらずほしいままにその持場を離れて会議室に赴き、折柄同室においてB郵便課長が十数名の非常勤職員を指揮して滞留小包郵便の配達のための道順組立作業に従事させていたところ、非常勤職員の右作業を力ずくで阻止し、同課長から非常勤者の排送作業を妨害してはならない旨をいわれるや、原告直属の課長である同人に対して「官が非常勤者によつて排送するのは闘争の切崩しだ。これに対しては力をもつて阻止する。」と昂然と抗らい、さらに同課長が「暴力的行為はよしなさい。」と命ずるや、「何が暴力か」といいながら同人の肩先を数回小突いて約六メートル廊下を押しやり、ついに右のような緊迫した状況のもとで非常勤職員の排送作業を殆んど一日に及んで妨害したことが認められ。右に述べたような諸事情に、本件懲戒事由にもとづき選択する処分が他の職員及び社会に与える影響等諸般の事情を総合して考えると、懲戒免職処分の選択にあたつては特別に慎重な配慮を要することを考量しても、なお被告九州郵政局長が原告に対して本件所為につき免職処分を相当とした判断が合理性を欠くものと断ずるわけにはいかないというのほかはなく、本件懲戒免職処分は裁量の範囲を超えた違法なものとすることはできない。原告の右主張は理由がない。