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ID番号 03612
事件名 時間外勤務手当金等請求事件
いわゆる事件名 浜頓別町立小中学校事件
争点
事案概要  公立小中学校の教職員が平日日直、遠足の引率、クラブ活動の実施等が時間外労働にあたるとして時間外勤務手当等を請求した事例。
参照法条 労働基準法37条
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務
労働時間(民事) / 労働時間の概念 / 教職員の勤務時間
裁判年月日 1972年3月23日
裁判所名 旭川地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (行ウ) 4 
裁判結果 一部認容・棄却
出典 行裁例集23巻3号132頁
審級関係
評釈論文 高原賢治・自治研究49巻8号174頁
判決理由 〔賃金-割増賃金-支払い義務〕
〔労働時間-労働時間の概念-教職員の勤務時間〕
 平日日直という時間外勤務は、学校長が定める学校内規または校時表に根拠を置くものであり、また法令により学校に備えなければならない学校日誌にも日直者の記載欄が設けられているのであるから、学校長の指示に基づく勤務というべきであり、そうである以上、その掌に当たる者は自己の責任において校舎、設備等の保全、外部との連絡、文書の収受および校舎内の監視をする義務を負うから、かかる勤務の形態を自発的奉仕行為と見ることはできない。
 (中略)
 右原告等がした遠足の引率に伴う時間外勤務は、学校長の指示に基づく勤務であることが明白であるのみならず、遠足の帰途とはいえ、児童を保護、監督することが教職員の職務の範囲内であることはいうまでもないから、これを自発的奉仕行為ということは到底できない。
 (中略)
 小、中学校の教育課程の基準として公示された学習指導要領において常に教師の適切な指導と援助等が要請されている小、中学校のクラブ活動を実施することは、教職員の職務の一部に属することは明白であつて、それが勤務時間外にわたることがあつても、学校長が明確にこれを中止するよう指示した場合を除き、学校長の事前または事後における包括的な承認があるものというべきであり、右承認は、同時に校務掌理者としての学校長の指示と評価して何等差支えないものと解せられる。従つて、クラブ活動の指導に伴う時間外勤務を自発的奉仕行為と見るのは失当としなければならない。
〔賃金-割増賃金-支払い義務〕
 労働基準法三七条の割増賃金支給の対象となる時間外勤務とは、同法三二条または四〇条所定の労働時間をこえたものをいうから、法定時間より短い勤務時間の定めがされている場合には、これをこえて勤務をしたとしても、法定時間の範囲内においては割増賃金支給の対象とはならず、右勤務に対して通常の賃金による時間外勤務手当を請求できることは格別として、割増賃金の請求権はないものというべきである。