全 情 報

ID番号 03669
事件名 雇用契約存在確認請求事件
いわゆる事件名 日立製作所事件
争点
事案概要  出張修理の命令を受けた工員が、いったんこれを承諾しながら出発前夜になってから行かない旨表明し、かねてから予定されていた日本のうたごえ全国大会に参加するなどして懲戒解雇された事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1971年3月11日
裁判所名 水戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (ワ) 49 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集22巻2号224頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 以上に認定した諸事実から明らかなように原告およびAに対して命ぜられた本件出張修理は、被告会社の信用維持の上からいつて、予定の日程のもとに完成することを要する重要な業務であり、しかも同年一二月三日午前一〇時頃前記命令を受けた原告が、一旦これを承諾し、旅費の前渡を受けて出張準備を整え、出発時刻(常盤線列車の発車時刻)を翌日の早朝時に定めておいたのにかかわらず、同月三日の夜になつて出張に行かないことを表明したのである。それにもかかわらず前記出張期間内の同月四日から同月六日までの原告の動静についてみると、前認定のように同月六日は日本のうたごえ全国大会に参加し、その際に電機労連傘下組合員等と交歓ないし情報交換を行ない、また原告本人の供述によれば、同月四日および五日は、東京都においてかねて音信が絶えていた原告の兄の消息につき親戚の者に照会し、また友人と会合して前記日本のうたごえ全国大会の打合わせ等を行なつたというのである。しかしながら前記大会の開催が予定されていることや兄が音信を絶つていることは、原告が出張命令を受けた当時既に原告において知悉していたことは原告本人尋問の結果と弁論の全趣旨により明らかであるし、また客観的にみて、一従業員として前記出張を断わるのも已むを得ないものと考えられる程の緊急性も認められない。さらに原告は直属上長から、出張に参加しなかつた理由およびこの間における原告の動静等につき報告を求められた際、虚構の口実をもおけ、事を構えて反抗的態度に出るなど誠意ある報告を行わず、果して改悛の情があるのかどうかも疑わしいものといわなければならない。さようなわけで、原告と被告会社との間の信頼関係は最早維持しがたい状態に立ちいたつており、職場秩序の上にも少なからぬ影響を与えているものと思料される。したがつて原告に対し、就業規則第四八条第一項第六号後段を適用して行なつた本件懲戒解雇処分は、情状の点を考慮しても正当であると考えられる。