全 情 報

ID番号 03722
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 日航事件
争点
事案概要  近所の主婦と情交関係に陥った航空会社の機長が適格性を欠くとしてなされた解雇についてその効力を争った事例。
参照法条 民法627条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1986年2月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ヨ) 2251 
裁判結果 却下(控訴)
出典 時報1186号138頁/タイムズ627号137頁/労働判例471号31頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 (5) 右認定事実によると、委員会が申請人の運航乗務員としての資格を免じた事由は存したものということができる。ところで、被申請人においては運航乗務員としての資格が高度に専門的なものであることからその資格要件を判断するにあたってはそれにふさわしい専門委員会を設置し、その判断に委ねるものとしていることからすると委員会の判断は罷免事由が存しないとか罷免が著しく不当であるとかの特段の事由がない限りこれを尊重すべきである。
 前記認定した諸点を総合考慮すると、申請人には多数の旅客・乗務員の生命と高価な機材を全幅の信頼をもって委ねうるだけの精神的安定性、責任感に欠け、また、被申請人の安全運航体制に対する旅客の信頼を損なわないような人格的資質に欠け、かつこの欠陥は、改善困難であって被申請人の機長のみならず、いかなる運航乗務員としても不適格であると判断されることも一応相当なものとして肯認できるところである。
 そうすると、申請人には委員会が認定した運航乗務員としての資格の罷免事由がいずれも認められ、また、この委員会の罷免決定には前述した特段の事由を窺うに足る疎明もないから、申請人の運航乗務員としての資格を免じた委員会決定は有効というべきである。
 (中略)
 (二) 次に第二の解雇理由たる不就労について検討する。
 就業規則五二条一項三号には被申請人の主張するとおりの定めがなされていることは当事者間に争いがなく、被申請人の主張する申請人の不就労事実は全部これを認めることができることは前記認定したとおりである。
 なお、申請人は、被申請人からの昭和五七年一一月四日、同月八日、同月一〇日、同年一二月三日の各出社命令に対し、いずれも出社しなかった理由について、被申請人は申請人がAを強姦したものと誤解したうえA側の恫喝に屈して申請人に退職を強要しようとしていたため、申請人は身を守るため出社しなかったものであり、申請人の出社命令自体が不当であったのだから不出社には正当な理由があると主張するが、前記認定の経緯に照らせば、被申請人の出社命令は、申請人の機長という身分について未解決のまま既に一年以上も経過しているので、この懸案を解決するため、被申請人の一方的処分による決着を避け、上司との話し合いにより申請人の自発的行動による問題解決を図るために申請人の意見を聴取することを目的としたものであったことは、当の申請人自身に理解し得ないはずはないと考えられることからすると、度重なる出社命令を無視したばかりか、出社しない理由を連絡しようとさえしなかった申請人の行動は、会社という組織の一員としての基本的ルール違反というほかはない。
 してみると、申請人の右不就労は全体としてこれをみれば前記就業規則五二条一項三号「勤務成績が著しく不良のとき」に該当するものというべきである。