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ID番号 03757
事件名 地位確認請求控訴事件
いわゆる事件名 新潟鉄道管理局(本訴)事件
争点
事案概要  新潟鉄道管理局経理部会計課から只見線入広瀬駅営業係への転勤を命ぜられた職員が右転勤命令の違法を主張して右転勤命令拒否を理由としてなされた懲戒(減給)処分の効力を争った事例(労働者側控訴棄却)。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
裁判年月日 1986年7月10日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ネ) 1698 
裁判結果 棄却
出典 労働判例478号6頁
審級関係 一審/新潟地/昭58. 5.30/昭和53年(ワ)377号
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 前記協約によれば職員の転勤は発令日の七日ないし一〇日前に本人に通知しなければならないものとされているところ、本件転勤命令の通知は発令日の六日前にされているのであるから、右協約の規定の文言からすれば、通知から発令までの日数が不足することになる。しかしながら、(証拠略)によれば、労使間では右予告期間は発令の日も含めて計算すべきものとする解釈がとられ、これに基づいて事前通知、発令を行うのが例となっていたことが認められるから、右文言にもかかわらず、発令の日を含めて七日前に通知をすれば足りるものと解すべきであり、したがって、この点について本件転勤命令に違法があったものということはできない。
 被控訴人と国労との間に「配置転換に関する協定」「只見線開業に伴う協定」が存することは当事者間に争いがなく、(証拠略)によれば、右各協定においては配置転換にあたっては地方対応機関の間で十分協議する旨及び本人の意思を尊重し意思表示を強要しない旨が定められているが、右「配置転換に関する協定」は合理化、機戒化に伴う配置転換を対象とするものであり、右「只見線開業に伴う協定」は只見線の開通により小出駅の機関区分駐所が廃止されるのに伴う異動に関するものであって、本件転勤命令についてこれら協定の適用はないことが認められる。控訴人は、右協定をそのほかの人事異動にも準用することが被控訴人と国労との間で了解され、実施されていると主張し、(人証略)中には右主張に副う供述があるほか、(人証略)の各証言及び原審における控訴本人尋問の結果によれば、被控訴人の職員の人事異動に際しては事前に本人の意向を打診することがかなり広汎に行われていることが認められる。しかし、一般に、人事異動を行うにあたってその実施を円滑ならしめるために使用者側が本人に対し事前打診を行うことはなんら異例のことではないから、単にそれが広汎に行われているということから直ちに事前打診や本人の承諾を経ない人事異動が許されないとの了解が労使間に存するものと推認することとはできず、(人証略)の証言をもってしては人事異動一般について右のような了解が存したものと認めるには足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。