全 情 報

ID番号 03788
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 戸塚郵便局事件
争点
事案概要  郵便局舎へのビラ貼り、落書き行為につき建造物損壊罪で起訴されたことを理由とする起訴休職処分、および一審の無罪判決後も右起訴休職処分を継続したことを、いずれも適法とした原審を認容した事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 休職 / 起訴休職 / 休職制度の効力
裁判年月日 1986年10月28日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (ネ) 3057 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集37巻4~5号401頁/労働判例487号78頁/訟務月報33巻7号1849頁
審級関係 一審/03137/横浜地/昭59.10.25/昭和54年(ワ)1834号
評釈論文
判決理由 〔休職-起訴休職-休職制度の効力〕
 先に引用した原判決理由中で説示するとおり、本件起訴休職処分となった控訴人両名に対する起訴にかかる公訴事実は、「被告人両名は、共謀のうえ、昭和四七年七月一八日午後一一時二五分ころ、横浜市戸塚区〔略〕所在の戸塚郵便局において、同郵便局長A管理にかかる同郵便局庁舎一階公衆室はめころし窓ガラス一一枚、同室入口ガラス扉二枚および同庁舎通用口のコンクリート柱、同通用口に接続するコンクリート塀などに、赤色・黒色などのマジックインクを使用して『不当処分粉砕悪徳管理者追報』『つば男B局を出て行け俺達はあまくないぞ』『Bあやまれ』『郵政の犬車にひかれて死ね』などと記載したビラ一二五枚を糊付けして貼付し、または赤色スプレー塗料を用いて『Bアヤマレ』『不当処分粉砕』などと落書きし、もって建造物を損壊したものである。」というものであって、その外形的事実の存在は明らかであるところ、起訴休職処分の適否は個々の事例ごとに各個別的事情を勘案して判断すべきものである。本件についていえば、いやしくも控訴人両名が勤務する職場庁舎内の、しかも一般国民が恒常的に使用する一階公衆室の窓ガラス等に多数のビラ貼り等をしたというものであって、その内容には上司を悪しざまに誹謗する文言もあり、その表現には国家公務員としていささか品位に欠ける部分も含まれており、控訴人両名の行為は悪質であるというほかはなく、たとい全逓信労働組合神奈川地区本部浜西支部の活動の一環として行ったものであるとしても、正当な組合活動の範囲を超えるものであって、とうてい許されるべきことではない。そうだとすれば、過去の起訴休職処分の実態が前記認定のような状況にあるとの一事から、本件起訴休職処分が著しく恣意的であって公正を欠くものであり、理由もなく控訴人両名を差別するものであるということはできず、主として全逓浜西支部の弱体化をねらって控訴人両名を職場から放逐しようとしたもので、制度本来の目的、効果を逸脱する違法、不当なものということもできない。