全 情 報

ID番号 03790
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 前橋信用金庫事件
争点
事案概要  定期積金の集中集金の業務に従事していた信用金庫職員が掛金一万円を着服横領したとして懲戒解雇されたのに対して、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1986年11月6日
裁判所名 前橋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ヨ) 177 
裁判結果 認容
出典 労働判例489号80頁/労経速報1285号22頁
審級関係 控訴審/04724/東京高/平 1. 3.16/昭和61年(ネ)3635号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 また、債権者から出納係に提出された現金に一万円の不足を生じた原因としては、当日債権者が集金した八七件の集金業務のうち、いずれかの集金の際の過誤、すなわち紛失や違算の蓋然性も否定し去るわけには行かない(現に、〈証拠略〉によれば、かかる現金不足の事故は、金融機関における大量の業務の間にはある程度不可避的に生ずることを窺うに十分である。)。のみならず、前認定のような債務者の集金、入金のシステムからすれば、顧客が保管する積金証書には受領印を押捺しながら、集金の一部を領得しこれに対応する集金カードを入金処理から除外するごとき横領の手段は、早晩露見することが必定の極めて稚拙な方法であることは明らかであって、債務者におけるこれまでの債権者の経歴等からすると、およそ考え難いところである。これらの諸事情に鑑みると、債権者が金一万円を横領したとの推断に伴う合理的な疑いは、とうてい払拭できないと言わざるをえない。それゆえ本件解雇は、事実を誤認してなされたものとして、無効と考えるのが相当である。