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ID番号 03808
事件名 懲戒処分取消請求上告事件
いわゆる事件名 道立夕張南高校事件
争点
事案概要  春闘行動の一環として地区労が主催した集会等に参加するため年次休暇を時季指定したことが、年次休暇に名を藉りた同盟罷業か否か争われた事例につき、これを否定し、また適法な時季変更権の行使がなされていないとして、無断欠勤を理由とする懲戒処分を違法とした原審の判断を正当とした事例。
参照法条 労働基準法39条4項(旧3項)
労働基準法89条1項9号
体系項目 年休(民事) / 時季変更権
年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 一斉休暇闘争・スト参加
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1986年12月18日
裁判所名 最高一小
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (行ツ) 166 
裁判結果 棄却
出典 時報1220号136頁/タイムズ627号99頁/判例地方自治45号16頁/労働判例487号14頁/金融商事762号44頁/裁判集民149号341頁
審級関係 控訴審/01346/札幌高/昭57. 8. 5/昭和50年(行コ)10号
評釈論文 岩渕正紀・ジュリスト883号80頁1987年5月1日/慶谷淑夫・判例評論342〔判例時報1234〕51~55頁1987年8月/今井徹・最高裁労働判例〔9〕―問題点とその解説175~188頁1989年11月/秋山昭八・教育委員会月報454号4~11頁1988年6月/小西國友・ジュリスト907号91~94頁1988年5月1日/石田眞・労働判例百選<第5版>〔別冊ジュリスト101〕228~229頁1989年3月/川口美貴・労働法律旬報1191号44~50頁1988年5月10日/田中舘照橘・法令解説資料総覧64号
判決理由 〔年休-時季変更権〕
〔年休-年休の自由利用(利用目的)-一斉休暇闘争〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 原審の認定した事実関係は、(1) 被上告人らは、本件統一行動当時いずれも北海道立A高校の教諭で、北海道教職員組合(以下「北教組」という。)所属の組合員であった、(2) 総評は、昭和四〇年四月二〇日に春闘第三波統一行動を行うことを計画し、また、公務員共闘会議は、ILO八七号条約批准に伴う関係国内法改悪阻止、団体交渉権の奪還、大幅賃上げ等を標榜し、これを要求する全国統一行動を同日実施することを計画した、(3) 北教組は、右統一行動の一環として要求貫徹集会及びデモ行進を実施することを企画し、右四月二〇日午後一時から組合員の三割を動員して、各地区労の主催する集会等に参加させることとし、これに参加する組合員は所定の様式に従った休暇届を提出するよう指示した、(4) 右三割動員の指示は、適法な時季変更権の行使があった場合にも、各職場の組合員の三割の者があえて職場を離れて集会等に参加することまで指示したものではなかった、(5) 被上告人らは、北教組の右指示に従い、同日午後一時から半日を年次休暇の時季として指定したが、当時、被上告人Y1は社会、同Y2及び同Y3は数学、同Y4は商業、同Y5は国語の各教科を担当しており、同日午後にはいずれも一時間宛授業を担当する時間割となっていたところ、あらかじめ、授業の振替、自習課題用印刷物の配布及び指導を他の教諭に依頼するなどの手当をしておいたうえ、本件統一行動に参加した、(6) A高校以外の学校においては、本件統一行動に参加したほとんどの者について時季変更権の行使はされず又は職務専念義務免除の承認がされている、というのであり、以上の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、是認しえないものではない。
 原審は、右のような本件の事実関係のもとにおいては、北教組の本件統一行動参加についての指示は、結局のところ、適法な時季変更権の行使があった場合にこれを無視して集会等に参加することまで指示したものでなく、各事業場における業務の正常な運営の阻害を目的としたものであるとまでいうことはできないとしたうえで、被上告人らが北教組の右指示に従って本件統一行動に参加するため年次休暇の時季指定をして就労しなかったことをもって、年次休暇に名を藉りた同盟罷業ということはできず、また、四月二〇日午後半日についての時季指定に対する校長の時季変更権の行使が、労働基準法三九条三項但書所定の事業の正常な運営を妨げる事情が認められないという点からも、適法でなかった以上、右半日につき被上告人らの年次休暇は成立し、就労義務は消滅していたということになるから、被上告人らの本件不就労は地方公務員法三二条及び三五条に違反するものではなく、これが右各条項に違反し同法二九条一項一号及び二号に該当することを理由としてされた本件各戒告処分はその前提を欠く違法なものである旨判断しているのであって、原審の右判断は、年次休暇権の行使と争議行為との関係につき前示したところに照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。