全 情 報

ID番号 03950
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
いわゆる事件名 ニプロ医工事件
争点
事案概要  昭和五八年度の昇給、夏期・年末各一時金についての査定をめぐる組合間差別をめぐる不当労働行為救済命令につき取消請求がなされた事例。
参照法条 労働基準法3章
労働組合法7条1号
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権
裁判年月日 1988年3月28日
裁判所名 前橋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (行ウ) 3 
裁判結果 棄却
出典 労働判例520号47頁
審級関係
評釈論文 原田保孝・昭和63年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊706〕388~389頁1989年10月/西村健一郎・法学セミナー34巻1号109頁1989年1月
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-争議行為・組合活動と賃金請求権〕
 1 右のようないわゆる大量観察法によって、賃金面における支部組合員と非支部組合員の間の格差が明らかとなるが、これが不当労働行為となると断ずるには、両者の労働の質量の均一性が前提条件となることは当然である。
 そこで考えるのに、併存する二組合の組合員の労働の質量の間に均一性があるという経験則はもとより存しないが、本件のように、組合活動の方針に関する見解の差のみから別個の組合が結成されているような場合は、両組合の組合員の労働の質量に有意的な差異を推認できる特段の事情がないかぎり両組合には相応する勤務成績の者が概ね均斉して分布するとの推定は許されて然るべきであるから、二つの組合の組合員を全体として比較する場合に限り、その提供する労働の質量の均一性をとり立てて立証する必要まではないものというべきである。
 (中略)
 そこで本件命令について見るに、前叙のとおり原告について従前からの差別的取扱いが疑われる状況下、労働組合法七条一号及び三号の不当労働行為の存在が肯認される以上、被告労働委員会が、原告に対し【1】本件昇給、夏季一時金、年末一時金につき、支部組合員の考課査定率を非支部組合員のそれにまで引上げるように再査定しこれによって計算した金額と支払済金額との差額を支払うように命じ、【2】弱体化した参加人A支部の団結を回復するため、不当労働行為を陳謝し今後これを行わない旨の誓約文を掲示させて従業員に周知させ(ポストノーティス)、かつ、【3】将来にわたって支部組合員を差別的に取扱わず参加人A支部の運営に支配介入しないように命じるのでなければ救済の目的を達成できないと判断したことには、相当の理由があると言うべきである。
 してみると被告の発した本件命令の主文内容は、いずれも相当であって労働委員会の裁量権を逸脱したものではなく、他に本件命令を違法とすべき事由はない。