全 情 報

ID番号 03987
事件名 仮処分異議事件
いわゆる事件名 ナトコペイント(異議)事件
争点
事案概要  組合役員が命じられた配転、転属命令に応じなかったとしてなされた解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法20条
労働基準法89条1項3号
労働組合法7条1号
労働組合法7条3号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
賃金(民事) / 賃金・退職年金と争訟
裁判年月日 1988年7月15日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (モ) 844 
裁判結果 認可
出典 労働判例525号66頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 以上のとおり、被申請人の主張する本件配転の業務上の必要性合理性については十分に首肯することができず、本件配転を実施するについて、申請人ら及びY会社労組に対し前記のような不利益や支障が生じるのもやむをえないと認めることはできない。
 そして、これらの点と前記二ないし五で疎明された諸事実とを彼此綜合して判断すれば、本件配転は申請人X1外五名のY会社労組加入及び同組合での組合活動を嫌悪し、Y会社労組の弱体化を企図して行った不利益取扱であり、また、申請人X1、同X2については、第一義的には組合自治の問題である組合員の範囲に関する被申請人の主張を本件配転によって事実上実現させたもので、これはY会社労組に対する支配介入というべきものである。とすれば、本件配転は、労組法七条一号、三号の不当労働行為であると結論せざるをえない。
〔賃金-賃金・退職年金と争訟〕
 賃金等を唯一の収入源とする労働者が解雇され、その収入を断たれた場合に、当該労働者が生活に困窮し、家庭崩壊の危機を招く虞れのあることもまた一般的に認められるところであるから、こうした一般的事情に加えて、前叙のとおりの仮処分申請人らの個別的生活情況等にしん酌してその必要性を判断することは、決して慎重さを欠いたことにはならないものと思料される。また、過去の賃金等についても、仮処分申請人が仮処分決定のあるまでの間、賃金等の支払いを受けることなくその生活を維持し得た事実は、生活を維持するに足りる何らかの資産なり収入があることを窺わせるといった意味で仮払いの必要性を減ずる一事情となることも確かであるけれども、その期間がさして長くない場合は、その間仮処分申請人らにおいて当座の緊急事態を凌ぐために他から借金するなどしてようやく生活を維持していることも世上しばしば見受けられるところであるから、やはり同申請人らの個別的諸事情に考慮を払うことなく、支払われるべき賃金等が既に過去のものになったということから直ちに必要性を否定するのは相当でないというべきであって、この点に関する被申請人の主張は採用できない。