全 情 報

ID番号 04047
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 亜細亜大学事件
争点
事案概要  雇用期間を一年とする大学非常勤講師の雇用契約が二〇回更新された場合につき、右雇用契約の更新拒絶に解雇法理は類推適用されないとして、雇止めが適法とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法629条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1988年11月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ワ) 5740 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集39巻6号619頁/労働判例532号63頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 講義が恒常的に設置されていても、雇用期間の定めのある講師を雇用することは当然ありうることである。また、前記のとおり、被告の原告に対する毎年の辞令交付は一年という期間を限定したもので、重要な更新手続に当るといえる。その交付が四月一日以降であったのは、毎年の金額が固定していない賃金額を記載する都合によるものであった。
 そして、右1のとおり、被告のY大学においては、専任教員はその職務及び責任の面で全般的な拘束を受けその地位が期間の定めなく継続するのに対し、非常勤講師は限られた職務を本来短期間担当する地位にあり、大学から全般的な拘束を受けないことを前提としており、非常勤講師の賃金等の雇用条件も専任教員とは異なっている。仮に被告が原告との契約の更新を予定していた時期があったとしても、被告において非常勤講師につき期間を定めて雇用するという形態は、その限られた職務内容と責任を反映したもので、その嘱託に当っては大学が裁量に基づき適任者を選任することを予定したものであり、被告はいつでも適任者を選任することができるというべきであるし、被告が昭和五九年以降原告との契約の更新を予定していたとは認められない。
 また、非常勤講師の側から見ても、他に本務・兼務をもつことはさしつかえなく、他にも収入を得ることは十分可能である。原告の場合も、他大学の教員の仕事も担当して相当額の収入を得ており、かつ、その拘束の度合等からして被告との結び付きの程度は専任教員と比べると極めて薄いものであって、原告は、被告との雇用契約がそのような性質のものであることを十分に知り又は知り得たというべきである。
 以上のような諸事情を考慮すると、原・被告間の雇用契約は、二〇回更新されて二一年間にわたったものの、それが期間の定めのないものに転化したとは認められないし、また、期間の定めのない契約と異ならない状態で存在したとは認められず、期間満了後も雇用関係が継続するものと期待することに合理性があるとも認められない。したがって、被告の更新拒絶につき解雇に関する法理を類推して制約を加える必要があるとはいえない。