全 情 報

ID番号 04090
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 北海道総合文化開発機構事件
争点
事案概要  生活文化振興に関する調査・研究を事業目的とする社団法人の研究員に対する、能力不足を理由とする解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
裁判年月日 1985年1月28日
裁判所名 札幌地
裁判形式 決定
事件番号 昭和59年 (ヨ) 1023 
裁判結果 却下
出典 労経速報1218号11頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 債務者の主張2の(六)のうち、債権者に、研究者としての実績や経験のないことは当事者間に争いがなく、(書証略)及び審尋の結果を総合すると、債権者は、債務者に採用されてから本件解雇に至る約一年四ヵ月の間に、自発的に研究活動をし、あるいは、日常の業務の遂行において、債務者の研究員として要求される前判示のような能力を備えていることを窺知させるに足りるだけの事務処理をしていないことが一応認められ、これらの事実と前記六の5で認定した事実を総合すれば、債務者が、昭和五九年六月五日当時の債権者について、その潜在的能力や将来的な可能性はさておき、即戦力となり得る研究員としての能力を有しないものと判断したことは、不合理なものではないと認めることができる。
 八 債権者の反論について判断するに、前判示の事実によれば、債務者が行った機構改革は、債務者が公益法人であること及び研究業務を早急に実施して完成する必要に迫られていたこと等に基づくものであって、仮に設立当初からの理事者らに運営上の責任が認められたにしても、そのことを理由に、機構改革の必要がなかったものとすることはできない。また、債務者は、債権者を雇用した後、受託した研究を実施する仕事を同人に与えることなく債権者の研究員としての能力の有無を評価したわけであるが、そのことのみから債務者の判断が不合理なものであるということもできない。次に、(書証略)によれば、債務者は、本件解雇に先立つ昭和五九年一月ころから、債権者に対し、同人の将来の進路についての助言を含めて退職を勧めていたが、債権者が拒絶していたこと、本件解雇の際、債務者は、債権者に対し、同友会において従来と同一の賃金と労働内容で同人を受け入れる用意がある旨を説明したが、債権者が拒絶したことが一応認められ、右認定の事実と前記五ないし七において判示した事実を併せ考えるならば、債務者の債権者に対する本件解雇が解雇権の濫用に当たるものと認めることはできず、他に本件解雇を解雇権の濫用と認めるに足りる的確な疎明資料はない。