全 情 報

ID番号 04137
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 藤田運輸事件
争点
事案概要  貨物自動車後部荷台の扉内側への顧客の悪口の落書き、無銭飲食、上司への反抗、無断欠勤等を理由とする運転手に対する解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 無届欠勤・長期欠勤・事情を明らかにしない欠勤
解雇(民事) / 解雇事由 / 上司反抗
解雇(民事) / 解雇事由 / 第三者得意先からの苦情
裁判年月日 1985年11月18日
裁判所名 千葉地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ヨ) 235 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例465号37頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-無届欠勤〕
〔解雇-解雇事由-上司反抗〕
〔解雇-解雇事由-第三者得意先からの苦情〕
 債務者の就業規則一八条一項には、その五号で「その他会社の都合によりやむを得ない事由があるとき」を解雇事由の一つと規定(以下、五号事由という。)されているが、その二号に解雇事由として「経営の合理化による職制の改廃、経営の簡素化、事業の縮少等により剰員を生じたとき」と規定されていることからすると、右の五号事由は、経営の合理化、簡素化、事業の縮少といった会社の経営面の事情に基づく会社都合を意味するものではなく、職場の規律維持、業務の円滑な遂行といった業務運用面からみた会社都合をいい、勤務不良、顕著な作業遅滞等の業務運用面の支障により職場の規律維持、業務の円滑な遂行が阻害され、解雇以外にそれを回避する適当な方法がない場合をいうものと解するを相当とする。
 (2) 前記疎明事実によれば、債権者は、他の従業員と比較して出勤率も悪く、欠勤届も乗務二、三時間前のものが多く、債務者の配車担当者に代替乗務員を確保するため苦労をかけ、しかも、前記のとおり、始末書の提出及び出勤停止処分を各二回、うち一回は更に減給処分を受けるなどその勤務状況は必ずしも芳しいものではなく、しかも、本件解雇予告決定の直前に四日間、間欠的に欠勤しているのであって、これらの事情からすると、債権者の所為は、五号事由に該当すると考えられなくもないが、しかし、四日間の欠勤は、債権者が十二指腸炎もしくは十二指腸潰瘍に罹患したことによるもので、四日間のうち、三日は債権者の妻から債務者に対し電話で胃痛により欠勤する旨届出ており、あと一日は、債権者が医者にいっていて留守にしていたため債務者からの連絡に即応できず、無断欠勤とされたが、債権者としては、その前日に妻が債務者に連絡した際、治るまで休ませてもらいたい旨伝えたので無断欠勤にならないと考えているというのであり、債権者の右欠勤によって債務者の業務運営に具体的、現実的な支障が生じた事跡の認められない本件においては、債権者がこれまで二回にわたって懲戒処分を受けたりしたことを考慮しても、右の四日間の欠勤を機縁としてなされた本件解雇予告には五号事由があったとはいえない。