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ID番号 04142
事件名 分限休職処分等取消請求事件
いわゆる事件名 姫路産業技術高校事件
争点
事案概要  臓物嫌疑により起訴された高校教諭に対する起訴休職処分が適法とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
地方公務員法28条2項2号
体系項目 休職 / 起訴休職 / 休職制度の合理性
休職 / 起訴休職 / 休職制度の効力
裁判年月日 1985年12月19日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (行ウ) 8 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例468号48頁/判例地方自治32号36頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休職-起訴休職-休職制度の合理性〕
 地方公務員法二八条二項二号による起訴休職処分は、刑事訴追を受けた公務員を任命権者の裁量によって職務の執行から排除することにより、職場秩序の維持、職務の正常な運営及び公務に対する住民の信頼の確保等を図ろうとする制度に他ならない。したがって、右制度の趣旨からして、当該起訴の対象とされた公訴事実の成否は処分の要件でないことは明らかであるから、任命権者が起訴の対象とされた公訴事実が真実であって、犯罪を構成するものであるか否かについてまで考慮する必要がないことは多言を要しない。
 もっとも、任命権者は、公務員が刑事訴追を受けたという要件さえ存在すれば、他に何らの制約もなく起訴休職処分をすることができるものと解すべきでなく、当該公務員の担当する職務の性質、起訴にかかる公訴事実の内容・罪質、起訴に伴う身柄拘束の有無及び当該処分と刑事罰との均衡等、諸般の事情を比較衡量したうえで前記制度の趣旨に照らして必要な限度においてのみ処分をなし得るのであって、任命権者が裁量権の行使についてその範囲を逸脱し、又はこれを濫用した場合には、当該処分は違法であり取消を免れないというべきである。
〔休職-起訴休職-休職制度の効力〕
 本件公訴事実が別紙のとおりであることは当事者間に争いがなく、その罪名は臓物故買罪であり、その法定刑は一〇年以下の懲役及び二〇万円以下の罰金(刑法二五六条二項及び罰金等臨時措置法三条一項一号)であって、仮に原告が右公訴事実について有罪の判決をうけるときには、地方公務員法一六条二号の欠格事由に該当し、当然に失職するものである。また、前掲甲第三号証の一及び弁論の全趣旨によれば、原告は公立A高等学校教諭の職にあって、理科(化学)の授業を受持つ一方、同校における分掌事務により総務部長として学校行事の企画、対校外交渉及び教員間の連絡調整事務等を担当し、校長を補佐する地位にあったこと、さらには身柄拘束のまま起訴され翌五八年二月四日に保釈されるまで勾留されていたものであることをそれぞれ認めることができ、右認定を覆すに足る証拠はない。そうすると、保釈されるまでの身柄拘束やあるいは公判出頭義務により、原告に正常な職務の遂行が期待できなかったことを暫く置くとしても、本件公訴事実のようないわゆる自然犯・破廉恥犯により公の嫌疑を受けて訴追された公務員を教師として教壇に立たせ、あるいは前記分掌事務に従事させることが、職場秩序の維持、公務の正常な運営及び住民(なかんづく原告の奉職する学校の生徒や父兄)の信頼確保にとって、重大な支障となることは明らかであるから、被告が原告を起訴休職処分するにつき、その裁量権を逸脱・濫用したり、あるいは、比例原則・衡平原則に違背したものということはできない。