全 情 報

ID番号 04199
事件名 仮処分異議事件
いわゆる事件名 菱成産業事件
争点
事案概要  関連会社への出向命令を違法とする仮処分決定の一週間後に右関連会社への六カ月の出張命令につき、仮処分決定に抵触し無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 出張・外勤拒否と労働義務
裁判年月日 1970年8月28日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (モ) 1312 
裁判結果 認容
出典 時報608号167頁/タイムズ256号175頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-出張・外勤拒否と労働義務〕
 そこで本件出張命令の性質につき検討するに、《証拠略》を総合すると、(一)従業員が出向になると被申請会社を休職になるが出張では休職にならない、(二)出向になると給与は出向先から支給されるが出張では従前どおり被申請会社から支給される、(三)出向は通常期間の定めがないが出張では定めがある(本件の場合は六ヶ月)、(四)労働組合員が出向すると組合を一応脱退することになるが出張では組合員資格に変動はない、等被申請会社によってなされる出張命令と出向命令にはその効果に差があることが一応認められるが、一方前掲各証拠によると、昭和三七年以来被申請会社によってなされた比較的長期の出張命令は、本件後昭和四四年一月一八日からAにB会社に出張するよう命令したのを除いては、すべて被申請会社の支店に対するものであって、本件出張命令は出張先に被申請会社の支店も営業所もないはなはだ特異なものであること、申請人のB会社において予定された勤務内容は出向によっても出張によってもB会社の業務である塵芥の焼却作業の監督に従事することになっていたこと、したがって通常出張をさせても被申請会社が出張従業員に種々の業務上の指揮命令をなすことは可能であるとしても、本件の場合は右場所的条件や勤務内容によって、少くとも直接的な労務指揮権はB会社に移転せざるをえない(申請人がB会社において監督的業務を担当するとしてもその理は同じである)とみられることが一応認められる。そうすると本件出張命令は、その名義のなんたるとを問わず、実質的には第三者たるB会社の指揮下においてB会社に労務を提供すべきことを命じるものであって、本件出向命令と同視すべきものといわざるをえない。
 《証拠判断略》その他新たに出張命令を出すことを正当化すべき事情の変更があったことを認めるに足りる証拠はないので、右出張命令は実質的に前記仮処分決定に抵触し、その効力を生じないものといわざるをえない。