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ID番号 04202
事件名 仮処分控訴事件
いわゆる事件名 日本軽金属事件
争点
事案概要  大卒の見習社員に対する、レポートの誤字・脱字の多いことを理由とする解雇につき、権利濫用にあり無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 本採用拒否・解雇
解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
裁判年月日 1970年9月17日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ネ) 221 
裁判結果 控訴棄却
出典 労働民例集21巻5号1274頁/時報606号8頁/東高民時報21巻9号171頁/タイムズ254号170頁
審級関係 一審/04221/東京地/昭44. 1.28/昭和42年(ヨ)2399号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-試用期間-本採用拒否・解雇〕
〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 以上認定したところによれば、控訴人主張の解雇理由のうちで被控訴人の責任を問いうる事実は昭和四二年四月七日のA主催のBホールにおける歓迎会と同年六月二九日のC株式会社本社工場見学における二回の遅刻だけである。ところで原審証人D及び当審証人Eの各証言によれば、控訴人が被控訴人の不適格事由として最も重視したのは解雇理由のうちレポート提出拒否の点であつて、その他の理由は附随的に掲げたものであることが窺われ、しかも右Dの証言によると、見習社員の選考担当者である人事部長、人事課長及び人事係長が被控訴人を解雇すべき旨を決定したのは正に右六月二九日の右三者の協議に基くものであるが、右協議の際は同日の遅刻の事実は右三者には報告されていなかつたことを認めうるから、右遅刻はいわば被控訴人の解雇理由の補強として付け加えたものというべきである。仮に正式の解雇決定は見習期間経過の際であるから、その時期までの事由を解雇理由として挙げることは何等支障がないとしても、遅刻は僅か二回であり、被控訴人が平素遅刻を重ねたとの疎明はないから、これをもつて被控訴人の不適格性を判断するのは早計のそしりを免れない。その他見習期間中における被控訴人の勤務態度に誠実さを欠くとか、協調性に乏しいとかの事実を認めるに足りる何等の疎明もない。然らば控訴人の被控訴人に対する本件解雇は正当な理由がないのになされたものであり、契約の信義則に反するものであつて、権利の乱用として無効であるから、被控訴人と控訴人との間の昭和四二年四月一日付雇傭契約は継続していることは明かである。なお前記二において引用した原判決理由二の2の雇傭契約の性質について判断したところからして、控訴人は被控訴人を正社員たる資質を有しないものとして解雇することが許されない以上、これを正社員に昇任する義務があるものと解されるから、控訴人は見習期間が経過した昭和四二年一〇月一日をもつて被控訴人を正社員とする旨の発令をなすべきものである。