全 情 報

ID番号 04220
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本電信電話公社事件
争点
事案概要  職場外の行為により公務執行妨害罪および傷害罪により懲役八月、執行猶予三年の判決(確定)を受けたことを理由に就業規則の「禁錮以上の刑に処せられたとき」を適用して免職処分とされた者がその効力を争った事例。
参照法条 日本電信電話公社法31条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 企業外非行
裁判年月日 1969年1月27日
裁判所名 山口地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ヨ) 16 
裁判結果 却下
出典 労働民例集20巻1号18頁/訟務月報15巻5号550頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-企業外非行〕
 ところで、法三一条三号に規定する「その他その職務に必要な適格性を欠くとき」とは、公社員の地位が現行法令の建前上国家公務員の地位に近くそれに準ずる公共性の強い職務に従事するものとして扱われていることが認められるから、単に公社員として必要な専門的知識・能力を有しない場合に限らず、公社員が反社会的性格の強い犯罪をおかした場合のごときにあつては、それが公社員に必要な遵法精神の欠如を示しているのみならず、かかる公社員を職場内に存置させることは公共企業たる公社に対する国民一般の不信感を招き、かつ職場内部の規律をみだすおそれが強いものであるから、かような場合も公社員としての適格性を欠く場合に包含されるものと解すべきである。しかして、一般に禁錮以上の刑に処されることは、その犯罪の構成要件自体反社会的性格が強い犯罪類型に該当するか、または特に犯罪の情状が重い場合であるから、特段の事情が認められない限り、禁錮以上の刑に処されたことは、法三一条三号該当の事実を推定させる主要重大な事実というべきであり、特に右推定を覆えす反証のない限り、禁錮以上の刑に処せられたことをもつて公社員を免職にすることは、その限りにおいて法三一条三号の趣旨に反せず有効な取扱いと解する。
 これに対し申請人において(1)、右懲役に処された公訴事実は無罪である、(2)、右公訴事実は職場外の事件に関するもので被申請人の統制の及ばないものであると主張するが、右有罪判決が確定したことは当事者間に争いないところ、これをくつがえし申請人が無罪であるとの疎明資料は何ら存在しないから(1)の主張は採用するを得ないものであり、(2)の主張については私企業の場合においては兎も角前記のとおりの公社員の法的地位に鑑みると、反社会的性格の強い犯罪行為に関する限り単に職場外の事件であることをもつてただちに公社の統制外の事件であるとし、処分を無効とする理由となりえないものというべきであるから、申請人の右主張はいずれも理由がなく、他に特段の事情を認むべき疎明は何ら存しない。
 すると、被申請人において、就業規則五五条一項五号にもとづき申請人を免職にしたことは、法三一条三号の趣旨に反するものということができないから、その限りで本件解雇は一応有効ということができる。