全 情 報

ID番号 04238
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 北日本製紙事件
争点
事案概要  新規に採用された正規従業員との置きかえの必要上解雇された臨時従業員がその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性
裁判年月日 1969年4月1日
裁判所名 札幌地
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ヨ) 387 
裁判結果 却下
出典 時報565号80頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の必要性〕
 債権者を含む会社の臨時従業員は、もともと正規従業員の不足による労働力を補充するための要員として数ケ月の期間を区切って会社に採用されたものであり、正規従業員に登格される途が閉されているのみならず、正規従業員が補充されるなどして労働力に余剰を生じた場合には会社を退職するのやむなきにいたるのが、本件解雇以前の数年来つづけられてきた会社の慣行であったところ、会社は昭和四一年一〇月翌年度採用の正規従業員として新規高校卒業予定者約二六名を内定したことから、それに伴い新規採用の正規従業員によって置き換えられるべき臨時従業員の整理の必要が予想されるにいたった。しかして、右採用内定の段階ではいまだ採用実人員は確定せず、従ってなんにんの臨時従業員を整理する必要があるかは必ずしも明らかではなかったが、翌年三月二〇日ごろにいたり、当時会社に雇用されていた臨時従業員三四名のうち将来の補充要員を除いた一五名を整理する必要があるとの判断に達し、一応右人員を解雇する予定をたてたところ、その後六名の自己都合退職者が出たため、残りの九名を解雇することとなり、右解雇予定者は、その直前の三ヶ月間である昭和四一年一二月一日から翌年二月末日までの間における欠勤日数を主として、その他年令などを考慮して選別するはこびとなり、同年三月末ごろ、右基準にしたがって九名の解雇予定者を選定したが債権者は右期間における欠勤日数が五六日(この欠勤日数については、当事者間に争いがない。)ときわめて多く、臨時従業員のうちで一番多かったのみならず、右期間以前においても欠勤日数が少なくなかったため、右九名の解雇予定者のうちの一人に選ばれるにいたった。そして、会社は同年四月一日前記内定の新規高校卒業者二六名を正規従業員として正式に採用し、右新規採用者の教育期間の終った後である同年五月五日限りあらかじめ選別した債権者を含む前記解雇予定者九名を臨時従業員就業規則一三条(3)所定の「止むを得ない業務上の都合がある場合」に該当するものとして解雇したものである。
 以上の事実が認められ、これによると、会社は本件解雇当時、新規従業員採用にともなう措置として、臨時従業員の中から少なくとも数名の者を解雇する業務上の必要性があったものというべく、かゝる場合その解雇者を選択する基準として過去の欠勤日数に主眼を置くことは、企業の効率的経営をはかる点からも従業員相互の公平を計るうえでも一応の合理性を有し、右欠勤日数の算定期間を三ケ月間に限ったとしてもあながち不合理であるとは断じ得ないというべきである。
 しかるところ、前記のとおり債権者は他の臨時従業員に比べて右算定期間中の欠勤日数がとびぬけて一番多くしかもそれ以前の欠勤日数も少なくなかったのであってみれば、会社が前記解雇対象者の一人として債権者を選んだのは相当であって、本件解雇には一応正当な事由があったと解するのが相当である。