全 情 報

ID番号 04307
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 福野編織事件
争点
事案概要  企業閉鎖にともなう解雇を不当労働行為とし、会社役員に対する損害賠償請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法7条1号
民法709条
民法719条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更
裁判年月日 1968年9月18日
裁判所名 富山地高岡支
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ワ) 42 
裁判結果 認容
出典 時報543号81頁/タイムズ228号154頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止〕
 (ト) ところで、右団体交渉の間に、A会社は、原告らが第二組合を結成したことを嫌い、その活動を阻止しようとの主たる意図の下に同年一二月一九日に、同月一七日設立のB会社(昭和四二年九月解散)に対し、A会社所有の一切の土地建物および機械設備(後記機械を除く)を譲渡しまた、その頃、被告Y1所有の土地建物につき結んでいた賃貸借契約を解除し同月一八日付で右土地建物につきB会社と賃貸借契約を締結させ、更に、A会社が昭和四〇年末にC会社から代金八五〇万円で購入した高性能を有するD会社製全自動横編機一台を他に搬出し(右機械はその後被告Y2が買受けて、現在同被告が経営するE会社で稼働している。)、もって企業閉鎖をし、そうして同月一九日午後五時原告等を含む全従業員に対し、何らの予告もなさず、経営不振のため企業を閉鎖し全員を解雇する旨の通告をなした。(この点に関し、被告等はA会社が企業を閉鎖したのは被告Y1のノイローゼとA会社の累積赤字である旨主張し前掲証拠によれば、右事実の存することは認められないではないが、前記認定の諸事実と対比するとき、これがA会社の企業閉鎖の主たる理由であったとは到底考えられない。)
 (チ) 以上のように原告等に対する前記解雇通告はA会社が原告等の結成した第二組合の活動を嫌いそれを阻止せんとしてなされたものであるから、原告等に対する右解雇通告は労働組合法七条一号の不当労働行為に該当し無効である。従って、原告等は依然としてA会社の従業員たる地位を有し、昭和四一年一二月二〇日以降の賃金請求権を失っていないものであるところ、A会社の前記の如き企業閉鎖財産処分により、右賃金債権は事実上満足を受けることができない状態になっている。
 三 ところで、被告Y1、同Y2、同Y3、同Y4はいずれも、A会社の取締役、被告Y5はA会社の技術顧問、被告Y4、被告Y6、同Y7は、いずれもB会社の取締役であること、および被告らの身分関係からすれば、特段の反証がない以上被告等はA会社のなした右財産処分企業閉鎖解雇通告の決定に加わったものと推認するのが相当であり、しかも、右財産処分企業閉鎖は、違法な右解雇通告と密接に結びついた行為である以上、これらの行為により原告等の前記賃金債権の満足を得られなくなったことは、被告等の共同不法行為による債権侵害というべきである。
 よって、被告等は、各自連帯して原告等に対し、右債権侵害により蒙った損害を賠償すべき義務がある。
 四 そこで、原告等の損害について判断する。
 (一) 財産的損害
 昭和四一年一二月二〇日以降の原告らの賃金月額は、労働基準法一二条によって算出した平均賃金の三〇日分とみるのが相当であるところ、《証拠略》によれば、原告等の平均月額は、別紙(二)賃金目録記載の各賃金であることが認められるから、原告等は被告等の共同不法行為により右日時以降右各賃金の給付を侵害され月平均右各賃金相当額の損害を蒙ったものといえる。そして、本訴において右日時から同四二年四月一九日までの四ケ月間賃金相当額の本訴請求金額は被告等の前記認定行為に照らし相当因果関係の範囲内にあるものと考えられる。