全 情 報

ID番号 04354
事件名 解雇無効等確認請求事件
いわゆる事件名 豊国機械工業事件
争点
事案概要  懲罰委員会の席上での、会社の就業規則を違法だとする旨の発言を理由とする解雇につきその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 会社批判
裁判年月日 1967年10月30日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和40年 (ワ) 191 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労働民例集18巻5号1074頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-会社批判〕
 すなわち大意「会社内で会社の許可なく政治活動またはこれに類似する行為をしたことを懲戒事由とする就業規則の条項は違法だから認めるわけにはいかない、そのような項目の入つている、会社が勝手に作つた労働協約ないし就業規則(乙第七号証には原告は労働協約とのみいつたように記載してあるが、前後の記載から見れば、労働協約ないし、就業規則、あるいは就業規則の誤記かと見られる)は認めるわけにはいかない」との趣旨のことを委員のたずねに対し、原告は述べた。他方、原告は、その本人尋問において右発言の趣旨は、勤務時間の内外を問わず、会社内での政治活動を禁じる規則は違憲だとの趣旨を述べたのだとし、前記発言はそのように解することもできない事はない。
 原告の右発言の趣旨がそのいずれであつたにせよ、それは右のような事情調査の席上で、就業規則等の特定条項についての自分の意見を述べたに止まり、被告の就業規則ないし労働協約を全面的に否定したものではなく、被告の職務上の指示に一切従わないことを表明したものでもない。これを以て直ちに被告の具体的な職務上の指示命令に原告が不当に従わなかつたものということはできないし、他に原告が職務上の指示命令に従わず職場秩序を乱した事跡があつたことの証明はない。すなわち、原告の右発言が、就業規則等の意味、効力についての原告の誤解に基く誤つたものであるにせよ、単純な右発言のみを以て、就業規則第七〇条第三号所定の「職務上の指示命令に不当に従わず、職場の秩序を乱したとき」なる懲戒解雇事由に当るものとはなしがたい。
 (3) とすれば、被告のした前記解雇の意思表示は、その原因を欠き無効なものというべきところ、被告はその有効なことを主張しているから、その無効確認を求める原告の請求は理由がある。