全 情 報

ID番号 04393
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 北陸鉄道事件
争点
事案概要  休息中の囲碁に関する口論から同僚に暴行したことを理由とする懲戒解雇につきその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
裁判年月日 1966年11月15日
裁判所名 金沢地
裁判形式 決定
事件番号 昭和41年 (ヨ) 238 
裁判結果 一部認容
出典 時報472号64頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 申請人は昭和三六年三月以降被申請人会社に雇傭されてバス運転の業務に携わっていたものであるところ、被申請人会社は昭和四一年九月二八日付をもって申請人に対し懲戒解雇の意思表示をした。被申請人会社が右懲戒解雇の理由とするところは、申請人は同年八月三一日勤務終了後の一四時一〇分頃から、同じく勤務を終了した従業員仲間のAと囲碁をはじめ、一九時過ぎまでこれを続けていたが、申請人は連敗したため腹を立て右Aを足で蹴るなどの暴行を働き、同人に対し全治七日間を要する右大腿部挫傷の傷害を負わせて同人をして五日間欠勤させるに至ったもので、これは被申請人会社の懲戒規定にてらし懲戒事項10号の「暴行、脅迫、その他類似行為をもって他人の心身を迫害し、その業務の遂行を妨害したとき、または職務上の規律を著しく乱し、あるいは乱そうとしたとき」に該当するというものである。
 申請人は右の解雇理由たる事実は真実に反するもので、暴行を受けたのは申請人のほうであると主張するが、その点はしばらく措くとしても、右懲戒事項の定めは一般的抽象的であり、かつ、これに対応する懲戒の種類も出勤停止、降給、降職、解雇と段階的であるところから、具体的事案において最も重い処分である解雇を選択するには、当該非行の程度が著しく高い場合あるいは情状が極めて悪い場合でなければならないものと解される。ところが、本件懲戒解雇についてみるに、被申請人会社において前提としている申請人の前記行為自体についてみても直ちに懲戒解雇をもって臨むことを相当とするほどのものであるか否かは疑わしいのみならず、疎明によれば、申請人と前記Aとのいさかいにおいては、むしろAの側にかなりの責められるべき点のあったことが一応認められる。
 そうすると、被申請人会社のなした本件懲戒解雇は一方的に申請人のみを責めるものであるから酷に過ぎ、ひいては就業規則中の懲戒規程の適用を誤った違法な解雇として無効であることがうかがわれ、この点につき疎明があったものといわなければならない。