全 情 報

ID番号 04512
事件名 除名決議無効確認請求事件
いわゆる事件名 三井美唄事件
争点
事案概要  使用者主催の反共的政治教育を行なう従業員特別講習会に参加することを禁じた組合の指令に反し右講習会に参加した組合員が組合から除名されその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法2章
民法623条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 業務命令
裁判年月日 1953年1月31日
裁判所名 札幌地岩見沢支
裁判形式 判決
事件番号 昭和27年 (ワ) 49 
裁判結果 認容
出典 労働民例集4巻2号71頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-業務命令〕
 問題となるのは、本講習会の講習内容であるが、証人Aの証言と、原告X本人尋問の結果と、成立に争いのない甲第二号証、甲第四号証の一乃至三とを綜合すると、本講習会においては、B講師が戦後の日本の労働運動の傾向と現状につき、C講師がマルキシズムの批判とソ連の実態につき、D講師が国家自衛の問題とその必要性につき、E講師が日共の動向につき、F講師が中共を中心とする極東情勢につき、G講師が国際情勢と日本の地位につき、H講師が共産党の破かい活動から産業を防衛するについての基本問題につき、それぞれ論述し、これに対し、講師と受講者との間に質疑応答があつて、本講習会が閉会されている事実が認めえられ、この認定を左右するに足る証拠はない、だとすると、本講習は、一般教養教育であつて、原告等の職務内容そのものについての教育でもなければ、又これと直接、密接な関連を有する教育でもない、従つて、会社は、業務命令として、原告等に対し本講習会への参加を命じうる権利はないし、原告等もこれに応ずる業務上の義務はない。
 (4) もつとも、原告等主張のように、近代企業においては、その効率的生産とその永続性とを確保するため、従業員に対しては、技術教育のみならず、本件のような教養教育をも必要とすることはよくわかるが、必要だからと言つて、雇傭契約乃至は労働契約上一般に義務とされない事項を、使用者が、業務上の命令として、従業員に対し命じうる権利はないし、従業員もまたこれに服従する業務上の義務はない、よつてこの点についての原告等の主張は理由がない。