全 情 報

ID番号 04639
事件名 除名処分無効確認請求事件
いわゆる事件名 東洋レーヨン事件
争点
事案概要  事業附属寄宿舎自治会がした「自治会活動以外の活動を舎内において大衆を対象として行なう場合は、あらかじめ自治会に届出、許可を得てから行なう。」旨の決議につき、憲法に違反せず、公序良俗にも違反しないとされた事例。
 寄宿舎自治会内部の紛争につき、団体意思による判断をなるべく尊重すべきとされた事例。
参照法条 労働基準法94条
民法90条
体系項目 寄宿舎・社宅(民事) / 寄宿舎・社宅の利用 / 寄宿舎生活の自由・自治・管理権
寄宿舎・社宅(民事) / 寄宿舎・社宅の利用 / 自治と司法審査
裁判年月日 1963年9月28日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (ワ) 1907 
裁判結果 却下・棄却
出典 労働民例集14巻5号1315頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔寄宿舎・社宅-寄宿舎の利用-自治と司法審査〕
 本請求は寄宿舎居住者の自治団体である被告自治会がその秩序維持のためになした制裁の効力が争点となつているものであるが、国家内の種々の団体内部に形成されている特殊法秩序に関する紛争といえども、それが同時に一般法秩序に関係する限りでは裁判権の対象となるものと解すべく本件の如く不法行為に基く損害賠償請求の原因として問題とされている以上、裁判所は被告自治会が原告に課した制裁の効力についても不法行為の成否の見地から審判すべきは当然である。団体構成員が団体意思に基く統制に服すべきことは団体法理上当然であり、団体加入の合意に当然に伴うものと解されるが団体の秩序等を定めた規則のある場合は、それを団体意思の表現として遵守すべきものである。そうして裁判権の対象とされている問題に関する以上は、その規則の存否、有効性、該当事実の有無、或いは規則に準拠すべき行為の規則への適合性及びその有効性等についても争いのある限り当然裁判所の判断に服するものと解すべくただ右の判断にあたつて裁判所は、強行法規違反或いは公序良俗違反等一般法秩序の見地から当事者の合意に法的効果を付与することを是認しえない場合を除いては(その限界は結局団体の目的と関連せしめたうえ、社会通念により決すべきものである。)規則の解釈等についての団体意思による判断を可及的に尊重すべきものと考える。
〔寄宿舎・社宅-寄宿舎の利用-寄宿舎生活の自由・自治・管理権〕
 (1) 本件除名は原告が被告自治会から先に課された制裁に服さなかつたことを理由に会則第六三条第一号、第六四条に基いてなされたものであることは当事者間に争いがないこと前記のとおりである。成立に争いのない甲第一五号証(会則)によれば、会則第六三条第一号には制裁事由として「会則並びに機関の決議事項に違反する」ことを規定していることが認められ、被告自治会による制裁に従わないことは右に該当するものと解される。原告は右規定及び制裁方法を定めた同第六四条第一項の規定を公序良俗に違反し無効である旨主張する。しかし、右同証拠によれば右第六三条第一号は所定の会則、諸規則、決議事項に違反する行為を制裁の対象としたものであつて特定性個別性を有しており、同第六四条第一項の制裁方法も具体的に定められているから、右各規定が包括的規定で公序良俗に反するという原告の主張は理由がない。また団体が制裁処分をした場合にこれに従わない被処分者に対しその不遵守を理由に新たな制裁を科すことは許されるべきであり、不遵守を理由とする以上一事不再理の原則に反することにはならず、右を目して公序良俗に反するとはいえない。