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ID番号 04643
事件名 給料請求事件
いわゆる事件名 給料請求事件
争点
事案概要  出版物の編集・下刷校正の労務の提供に対する報酬につき、給与にあたるとされた事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法2条
民法623条
民法632条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
賃金(民事) / 賃金の範囲
裁判年月日 1963年11月6日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (ワ) 4015 
裁判結果 認容
出典 下級民集14巻11号2211頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-委任・請負と労働契約〕
〔賃金-賃金の範囲〕
 そこで以下右被告の支払うべき、また現に支払つた金員が、原告の被告に対する毎月の労務提供に対する報酬(いわゆる給料)又は、原告の前記邦訳版一巻分の仕事の完成に対する報酬(いわゆる請負代金)のいずれとして支払われる約定であつたかの点について判断する。成立につき争いのない乙第一号証の一ないし三、甲第六号証の一、証人Aの証言(第一回)により真正に成立したものと認められる甲第三号証の九および一一によると冐頭認定の被告から原告への金員の支払は昭和三四年一二月は二四日同三五年一月から三月まではその月の二五日、同年四月は二六日に各なされたことが認められ、証人A(第一回)、同Bの各証言、および原告本人尋問(第一、二回)の結果によると、原告は最初の二、三ケ月は準備期間とすることにつき被告の了承を得ていたが、原告が仕事を始めた昭和三四年一二月から二、三ケ月を既に経過した昭和三五年四月末頃までに原告は翻訳原稿の編集の仕事については約二巻分を、そして同下刷校正の仕事に至つては僅かに第一巻の一部を、それぞれ完了しているのみであるが、このような進捗状況であることを被告も十分承知していたこと、そもそも冐頭認定の契約締結の当時当事者間においては、前記邦訳版を一ケ月一巻出版の運びにする予定があつたことは原告の認めるところであるけれどもそれは必ずしも右契約の確定的内容とまではされず本件出版事業が軌道に乗つた段階での、いわば努力目標であるに止まること、および原告は、右契約に基く債務の履行に専念するため、右契約締結後である昭和三四年一一月末日限りで原告の当時の勤務先(月給約金三〇、〇〇〇円)である筑摩書房を辞職しておりかつ被告も亦これを了解していたことがそれぞれ認められる。
 以上認定の諸事実と証人Aの証言(第一回)および原告本人尋問の結果(第一回)を総合するときは、被告は原告の労務提供に対する対価すなわちいわゆる給料として(一巻分についての原告の仕事の完成の有無にかかわらず)原告に対し毎月二五日に、金五〇、〇〇〇円を支払うことを約したものであることが認定できる。以上の認定に反する証人Cの証言(第一回)被告本人尋問の結果は、上記認定に供した各証拠に照らしたやすく採用できず、他に以上の認定を覆えすに足りる証拠は見当らない。