全 情 報

ID番号 04650
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 新日本窒素肥料事件
争点
事案概要  会社が人員整理の一方法として従業員を別会社に勤務させるためにした退職命令につき、基本的労働条件が従来より低下しないことが確定するまでは効力を有しないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
裁判年月日 1963年12月26日
裁判所名 熊本地
裁判形式 決定
事件番号 昭和38年 (ヨ) 171 
裁判結果 一部認容・却下
出典 労働民例集14巻6号1519頁
審級関係
評釈論文 渡辺章・ジュリスト351号110頁
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 しかしながら、本件命令書および本件疏明書類を検討してみても、申請人らのA株式会社における労働条件、なかんづく基本的労働条件である労働時間および賃金について、何ら具体的なものが示されていない。そうすると、会社と組合との間の昭和三八年一月二一日付賃金協定書に盛り込まれた配置転換の内容は前説示のとおりであるから、申請人らのA株式会社における基本的労働条件が従来のそれよりも実質的に低下しないということが確定するまでは、なお配置転換の要件は充足せず、本件命令書に基づく意思表示も右配置転換としての効力を生じ得ないものといわねばならない。
 なお、被申請人はたとえ本件命令書の内容が前記賃金協定の配置転換にあたらないとしても、同協定において認められた人員整理の方法である基準解雇として有効である旨主張するけれども、前記の各認定事実と前示各疏明資料を総合すると、右協定においては、解雇基準を設けて申請人らを解雇するためには、当該解雇基準そのものの設定につき組合の同意を要することとしたことが認められ、本件においてその基準設定につき組合の同意を得たことの疏明はないので、被申請人の右の主張は採用できない。